色眼鏡|アマノ文筆クラブ作品
こちらに参加させて頂きました。
優しかった祖父の遺品を整理していたら、「色眼鏡」と書かれた革ケースから古いサングラスが出てきた。
かけてみると、目の前の景色がすっと沈み込み、温かなセピア色に染まった。
慌ただしい午後の街、排気ガス、コンクリートの冷たさ。
それらすべてが、まるで古い映画のワンシーンのように柔らかく溶けていく。
眉間にシワを寄せて歩くスーツ姿の男も、セピア色のレンズ越しだと、家族のために必死で戦う主人公に見えた。
泣きじゃくる子供をあやす母親の姿は、映画のワンシーンのように愛おしい。
「色眼鏡で人を見るな」と言うけれど。
祖父はこのメガネで、殺伐とした世界をいつだって優しく塗り替えていたのかもしれない。
サングラスを胸ポケットに仕舞い、深呼吸をする。
眼鏡を外したはずなのに、世界は少しだけセピア色のままだった。
(了)
