見出し画像

瀬川ロスを乗り越えて

冒頭から去ったはずの瀬川(小芝風花)の登場に、一瞬は「え?」となったものの、これは絶対に夢オチだと思い直す自分がいました。

というのも、ここで蔦重(横浜流星)とハッピーエンドに結ばれたら、チープなラブコメになってしまい、あまりにも下らない猿芝居になります。

ただ蔦重の心中に瀬川の占める割合がどれだけ高いかを表し、理想のシーンを見た事で現実の切なさをいっそう強調できるものになりました。
あらためて「瀬川ロス」が身に染みて、まるで抜け殻のようになってしまった蔦重です。

しかし、そこは落ち込んでばかりもいられない。
気を取り直して朋誠堂 喜三二ほうせいどう きさんじこと平沢 常富ひらさわ つねとみに自分で書いた原稿を見せて意見を仰ぐ。
その発案こそ瀬川と話題にしていた「瀬川の考える瀬川もの」だったのです。

蔦重は忘れてはいませんでした。
未練だけで終わらないのが彼のバイタリティーのみなもとです。

果たしてその「瀬川もの」は実現するのか?!
いやぜひとも実現してほしい!


二人の夢は吉原を良くすること

人の噂も七十五日じゃないの?

瀬川は何より外聞を気にして、蔦重のために身を引いて出て行きました。
それってどうなの?
そりゃ最初は陰口を叩かれて、客も寄り付かず、蔦重の本屋も流行らないかもしれません。

だが、それも時が解決してくれるはずです。
良いものを作っていれば、きっとまた客足は戻るものでしょうし、ましてや瀬川と息の合った夫婦で商売に精を出せば、周りも認めてくれるのでは?
元々、市中から村八分を受ける吉原だからこそ、そんな過ちもいつかは消えて無くなるように思うのですが。

瀬川が出ていく必要などないように思うのは私だけではないでしょう。

巡る因果は「恩」がいい

思うに蔦重自身の環境には、何かしらの「怨恨」が付きまとっていました。

鱗形屋うろこがたや(片岡愛之助)との関係こそが「恨みの因果」というもので、蔦重が主人公なので視聴者の私たちからは、鱗形屋をヒールに捉えがちですが、当時の世間一般からみれば、本意ではなかったにしても仕事を奪ってしまったのは蔦重になります。

阿漕あこぎでひどい人間だと思う人の方が多いのも当然でしょう。
市中の本屋からも村八分にされしまうのも当然の成り行きかもしれません。

過去回の「巡る因果は、恨みじゃなくて恩がいいよ」という瀬川のセリフがその全てを代弁していました。

さらに言うなら瀬川が「恩」を感じるべきなのは、この吉原から大金をはたいて救い出してくれた鳥山検校(市原隼人)に対して持つべきもので、その後も全ての願いを叶てくれたくれた事は、決して忘れてはならない大きな大きな「恩」なのです。

蔦重もそんな瀬川の意をくんだからこそ、良い本を作ろうという気持ちが一層大きくなったのは、何よりも2人共通の思いの根底には、
ー吉原を盛り立てて良くしたいー
というものがあったからなのです。

二人のハッピーエンドはルール違反

要するに、「怨恨」を「怨恨」で返していてはいつまで経っても恨みの連鎖は切れない。
だからこそ、今こそ「恩」で返して今後の因果は「恩」で巡らせようというのが2人の行き着いた答えでした。

そんな2人がめでたくハッピーエンドになってしまうのは、また新たな「怨恨」を生むどころか、一番やってはいけない事でありルール違反というものだと瀬川は思ったのです。

実のところ史実では、瀬川の行く末は不明で、噂や創作物による「後日談」が複数あります。
・身請けされる前から恋仲の男がいたが鳥山に引き裂かれた
・武家の妻になって2人の子を生んだ
・大工の男と再婚した
・夜鷹に身を落として落ちぶれた
などの話があり、身請け金額が法外だっただけに、世間から恰好のネタにされたことは間違いありません。

そのあたりは判らないからこそ創作し甲斐もあるというものですが、そもそも蔦重との恋バナ話が創作なので、ここらで終わらせておくのが妥当でしょう。
なんせ蔦重の嫁は「てい(橋本愛)」と決まっているのですから、ここらで退場なのは仕方ないですね。


松平武元まつだいら たけちかの公平な判断

「武元」と書いて「たけちか●●」と読むのですね。
名前だけはいろんな読み方があるので、特にフリガナ必須です💦

それはさておき、その松平武元(石坂浩二)こと”白眉毛”は自分の保身しか考えていないただのヒールではなく、武士らしい正義感を持ち合わせていたことがわかりました。

徳川家基と松平武元の急死

史実では10代・家治の嫡男である家基(奥智哉)が急死したのが1779年4月10日、そして松平武元が同じ年の半年後の9月5日となっています。
「白眉毛」の武元は老中という激務を老齢で務めていたこともあり、急死もあり得ますが、家基はまだ18歳で健康で元気だっただけに不自然すぎるのです。
どちらも死因ははっきりしていないところを、上手く関連付けしたものだと感心しました。
いかにももっともらしい。

そこで犯人は誰かと言うところに焦点は絞られ、ますますストーリーから目が離せなくなりました。

実際に暗殺説は2通りあり、田沼意次(渡辺謙)説と一橋治斉はるさだ(生田斗真)説があります。
まず田沼意次説を否定した「白眉毛」の鮮やかな推理はお見事でした。

黒幕は誰だ

では次に疑うべきは、今回も不気味に演出していた一橋治斉でしょうか?史実においても、その一橋治済の嫡子・豊千代が家斉となって11代将軍職に就くことになるので、それを思うと黒幕は一橋か?

前回の「突きつけられた吉原の現実と幕政改革の下火」より

ストレートに考えると、「白眉毛」はきっと真犯人●●●にまでたどり着いていて、その口封じで暗殺されたという筋書き●●●が見えます。
もしくはまだ二点三転して意外な結末に落ち着くのか。
見ている私たちは翻弄されつつ、その術中にハマっていくのを自覚せずにはいられません。

瀬川(小芝風花)といい、白眉毛(石坂浩二)といい、ロスはとても寂しいですが、史実の曖昧な部分を上手く創作して展開させたところは、脚本家の森下さんの上手さですね。
そして瀬川の白無垢姿の花魁道中の美しさは今も忘れられず、「おさらばえ。」と言ったシーンはきっとこのまま忘れる事はないでしょう。


余談ですが、家基が倒れた時の様子を証言していたのは芋洗坂係長?!ですよね?
あまりにも違和感のない百姓ぶりだったので、見逃しそうになりました。
今回、鉄拳といい、役者以外のタレントを上手く忍ばせているところも技ありで、今後もまたあるかもしれません。
「ウォーリーを探せ」ならぬ「お笑いタレントを探せ」も新しい楽しみ方になりそうです。


いいなと思ったら応援しよう!

千世(ちせ) サポートいただけましたら、歴史探訪並びに本の執筆のための取材費に役立てたいと思います。 どうぞご協力よろしくお願いします。