見出し画像

[ひと色展] わたしには名前がなかった

わたしには名前がなかった。

広大なこの空間、そう、大宇宙の片隅で、そっと全てを見守っている。

それがわたし。

わたしには名前がなかった。

わたしは独りだった。

独りである故に名を持つ必要もなかった。

誰もわたしを呼ぶことはなかった。

この広大な宇宙で、全てをただずっと眺めていた。

どのくらいの時が流れた頃だろうか。

果てしない時空を飛び越えて、ひとつの声が聞こえてきた。

それはわたしを呼んでいた。

その声は、小さな銀河団の中の、小さな小さな天体から響いてきていた。

その声の主はヒトの子だった。

ヒトの子はまだ言葉を持たぬ者だった。

言葉を持たぬが言葉を知っている者だった。

ヒトの子は真っ直ぐにわたしをみつけると、こちらを指差して、一言、

「あお」

と言った。

それがその者の初めて発した言葉だった。

そしてそれは、わたしが初めて呼ばれた瞬間であった。

気が遠くなるほどに長い長い距離と時間を隔てて、わたしは「あお」という名を授かった。

わたしの名は  “あお”

またの名を “コバルトブルーヒュー” という。

この大宇宙の初めから終わりまで、全てを見届ける存在、“色” の一角を担うものである。



こちらの企画に参加します☆

ごくまれに単語を発する息子が何色を見ても「あお」と言います。
なので、コバルトブルーヒュー “青いヒミツの色” から発想した詩を作りました。

それから、坊主めくりにはまっている娘が「殿札」のことを「ヒトの子」と言ったりする、とか、そういったことも。


いいなと思ったら応援しよう!