[ショートショート&★作曲募集] 幻想曲 第八番 感慨 別名『隣のマリア』の謎 - 片想い文芸部
幻想曲 第八番 感慨。このピアノ曲を弾くとあの人に会える。
僕は今、感慨を弾いている。
初めはゆっくり。だんだん、早く。その絶頂に達する48小節目まで一度もミスすることなく弾くことができれば扉が開く。
僕の指はもつれることなく音符を正確になぞりあの人へと突き進んでいる。
さあ、48小節だ、来たっ! 扉が開くのが見える。この扉は僕にしか見えない。
ゆっくりと、蝶番を軋ませながら、扉はゆっくりと開いていく。
扉が開いてもまだあの人は見えない。
美しい旋律に変化する次の流れで彼女を呼び出すのだ。48小節を越えれば多少のミスも許される。とにかく感情に訴える演奏が必要だ。
僕はあの人に会いたい気持ちを鍵盤にぶつける。
あの人に初めて出会えた時の感慨深さを思い出し、旋律を奏でる。
すると扉の向こうの光が揺らぎ、あの人が姿を現す。
いつもの姿だ。男物のTシャツに下は何も履いていない。いや、たぶん下着はつけている。Tシャツの裾が長いので見えない。
ほっそりした脚がそこから伸びている。ショートカットの髪の毛が彼女を少年のように見せる。
僕は曲を続けながら横目で彼女の幻を追う。
そう、彼女は幻だ。この幻想曲 第八番 感慨を正しい作法で弾いたときにだけ現れる幻想。
この曲は別名「隣のマリア」と言われている。
隣の世界から来たマリア。
曲が終盤に差し掛かると、またゆったりとしたメロディが繰り返される。そのテンポに合わせてマリアはゆっくりと歩き、振り向きそして微笑む。
僕はこの微笑みに恋をしている。
だから何度でも彼女に会うために感慨を奏でるのだ。
曲がエンディングに向かうと彼女の幻影は消えていく。
とても切ないエンディング。僕も彼女とお別れだ。自然と涙が出て頬を伝う。
曲が終わり僕の指が鍵盤から離れると、彼女の姿も完全に消えてしまう。
僕が彼女と出会えるのはたったこれだけ。触れ合うこともできない。見つめ合うことも語り合うこともできない。
「マリア」は感慨の作曲者 ショウ・ツキシマの恋人だとの伝承が残っている。不慮の事故で亡くなった彼女の思い出を閉じ込めたのがこの幻想曲だとか。
この幻想曲は第十番まであるのだけど、八番でのみ幻影が出現することが確認されている。
この曲は今では失われてしまった技術、音楽詠唱の一種だとされている。数々の研究機関でこの楽譜が研究されているけれど、その仕組みは解明されていない。
もしも一番から十番まで正しく弾くことができれば、もしかしたらマリアを復活させることができるのかもしれない。
だけど今となってはその方法が失われてしまった。
僕はマリアについて一般的な説とは少し違う解釈を持っている。
だってもしもマリアが恋人だとしたら、こんな誰にでも見れるような方法で、しかも恋人にしか見せないような姿で保存するだろうか? 僕だったら、僕だけに見れるような、もっと複雑なことをすると思う。
これはショウ・ツキシマからの挑戦状なのではないかと僕はこのごろ思っている。魅力的なマリアの姿は、この謎解きをさせるための原動力、つまり餌なのではないだろうか。
ショウ・ツキシマが何を企んでいたのかは知らないけれど、僕は受けて立つつもりだ。そこに何か邪悪なものがあっても構わない。
僕はマリアに恋をしている。まんまと餌にかかった間抜けな魔導士だと言われても構わない。
僕はこの魂を蝕まれても、「隣のマリア」を復活させたいのだ。
ナルさんの『片想い文芸部』に参加します。
ついでに…
この物語に出てくるピアノ曲『幻想曲 第八番 感慨』を作ってみませんか?
マリアを召喚できるような面白い曲を募集します。
★1人1曲でお願いします。
★特に規定はありません。自由に作ってください。(著作権の侵害はしないでね)
★AI作曲もOKです。その際はAIを使ったことを明記してください。
★ハッシュタグ #幻想曲第八番感慨 をつけてこのこの記事を埋め込んでください。
★特に賞はありません。お遊び企画です。
★期限もとくにないです。
★作っていただいた曲は私の記事で紹介させてください。
たぶん私も作ります。気が向いたらぜひ~。
