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「陸の孤島」はどこ? 全国100空港への「時間距離」を可視化してみた。

こんにちは!

以前、X(Twitter)に投稿した「空港到達時間マップ」のデータ作成の試行錯誤や、制作過程で知ることができた「日本の姿」について、いつか詳しくまとめてみたいと思っていました。

そこで今回は、ようやく形にできた「地図の自由研究」の記録を公開します。しばしお付き合いいただければ幸いです。

空港到達時間マップ(修正版)。2025年11月19日投稿

一見、サーモグラフィのようですが、これは日本全国にある約100箇所の空港への「車での到達時間」を計算し、可視化した地図です。

赤ければ空港から近く、青ければ遠い。地図の形そのものは変えず、「時間」というフィルターを通して日本の姿を表現してみました。

きっかけ:北海道のデカさと車社会

きっかけは3年前、私が北海道へ移住したことでした。北海道は14ヶ所と全国の都道府県の中で最も空港の数が多い地域ですが、面積を考えればそれも納得です。

実際に住んでみると痛感するのが「圧倒的な車社会」であること。関東平野に根ざしていた私の価値観は、ごく一部であるということを思い知らされました。

そしてふと疑問が湧きました。「この広い北海道で、最も空港から遠い『陸の孤島』はいったいどこなんだろう?」

そう考えたのが、このマップ制作の始まりでした。

マップ作成:全国約100空港を「自前」で計算する

地図を時間で色分けする手法(到達圏解析)自体は、珍しいものではありません。このマップのこだわりは「全国規模」であることです。

全国におよそ100ヶ所ある空港までの到達時間。その膨大なデータを統合し、「日本中どこにいても、最寄りの空港までどれくらいかかるか?」を、ひとつの地図上で表現することに挑戦しました。

しかし、道路のデータ量が膨大すぎて一度に読み込むことはできず、日本列島を15ほどのブロックに分割して処理しました。その道路に速度データを付与し、各空港からの到達時間を計算。ひたすら計算と統合を繰り返す作業で、自宅のパソコンのファンは土日中、ほぼずっと回りっぱなしでした。

新千歳空港からの到達時間を計算した例。帯広・旭川などが3時間圏内であることがわかる

また、配色にもこだわっています。「日本の体温」をイメージし、サーモグラフィーを連想させる赤から青へのグラデーションを採用。色覚バリアフリーにも配慮したユニバーサルな配色・デザインを目指しました。

反響と改善:「よりリアルな地図」へ

X(Twitter)に投稿したところ、予想以上の反響をいただき、なんと地上波の情報番組でも取り上げていただきました。

しかし、多くのコメントをいただく中で、痛いところを突くご指摘もありました。「こんなに早く着くわけがない。実際は渋滞や信号でもっと時間がかかる」

すみません、おっしゃる通りです。当初は道路の「制限速度(最高速度)」だけで計算していました。そこで改善版では国土交通省の「平均旅行速度データ」を採用。こちらは渋滞や信号待ちも含んだ速度平均のデータです。

計算にあたり、人口密集地とそうではない所での速度差を道路種別ごとに反映したことで、より実情に近い「真の到達時間マップ」へと進化できたと思います。

制限速度と平均旅行速度で計算した際の関東地方の比較

データが示す「日本の陸の孤島」

マップを解析した結果、いくつかの興味深い事実が見えてきました。

  • 北海道の最遠地:道南の「島牧村」周辺。先述の通り、北海道は日本一空港が多い都道府県です。にもかかわらず、このエリアは青に染まっています。これは空港が足りないのではなく、「空港をいくら作ってもカバーしきれないほど、北海道の大地が広大すぎる」という事実を突きつけています。新千歳からも丘珠からも函館空港からも遠い。既存のインフラ網をも飲み込む「スケールの桁違いさ」が、この濃い青色に表れています。

  • 本州の「青い」エリア:群馬県北部、伊豆半島など。共通しているのは「物理的に、周りに空港がない」という点です。特に群馬県は新幹線こそ通っていますが、空の便を利用しようとすると羽田・成田等まで出る必要があり、どうしても時間がかかってしまう。どんなに鉄道網が発達していても、埋められない「空港空白地帯」の存在。それが、この地図にはっきりと青く刻まれています。

道南の日本海側(島牧村)や群馬県北部・伊豆半島・高知県西部などに空港まで2時間以上を示す青いエリアが広がっている

このマップの「青いエリア」は、単に遠い場所というだけではありません。そこは、空港の恩恵を受けにくい「アクセスの空白地帯」でもあります。

例えば、関東地方の内陸部、群馬・埼玉県境付近のエリア。首都圏でありながら空港への時間がかかるこの地域では、新空港の構想が議論されています。

均質化されたと思っていた日本には、いまだに「到達時間の格差」が存在する。このマップが、ご自身の住む地域のインフラや、これからの街づくりについて考える一つのきっかけになれば幸いです。

エリア別詳細:あなたの街は「何色」?

全国の縮尺だと見えにくかった詳細な部分を見るために、エリアごとの拡大図も用意しました。画像をタップ(クリック)すると、高画質で拡大して見ることができます。ぜひ、ご自身の実家や住んでいる街を探してみてください!

北日本エリア

北海道の圧倒的な広さ。道南の日本海側(島牧村)のほか、道北の日本海側にも青いエリアが存在します。また、下北半島の北西部に青いエリアも。

東日本エリア

群馬県と伊豆半島南部の青いエリアが目立ちます。

西日本エリア

紀伊半島の南部と四国西部に青いエリアが存在します。

南西諸島(沖縄・奄美)エリア

主要な島には空港が存在する一方、沖縄本島の国頭地区は比較的遠いエリアとなっています。

技術的な裏側:オープンデータ/ツールの可能性

このマップは、高価なソフトやデータを使わず、誰でも手に入るもので作られています。

  • ソフトウェア:QGIS(オープンソースの地理情報ソフトウェア)

  • 道路データ:OpenStreetMap(地図のWikipediaともいえる存在)

  • 背景地図データ:国土交通省 国土数値情報(行政区域)

  • 速度データ:国土交通省 平均旅行速度データ

「オープンなデータとツールだけで、ここまで社会を可視化できる」。そんな可能性も、このマップを通して感じていただければ幸いです。

詳しい技術的な解説(QGISでの作り方)は、こちらのブログにまとまっています!

おわりに

今回、北海道での実体験から始まった「空港到達時間マップ」の深掘りにお付き合いいただき、ありがとうございました。

一見するとただの色分けされた地図ですが、その背景にある「時間距離」という視点は、私たちの暮らしや地域のインフラを考える上で、まだまだ多くの発見を秘めていると感じます。

これからも、こうした地図などを通じた可視化を続けていきたいと思っています。

最後にお知らせと、少しだけお願いです。

実はこの記事、来年開催される地図の祭典「Map Museum 2026」のコンテストへの応募も兼ねています。

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