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シンガポール駐在員のリアルを、できるだけ正直に書いてみる③

赴任生活を通じて感じた、シンガポール人の特性や現地での暮らしについて綴っていきたい。

シンガポール人の特性

同じアジア人であっても、日本人とはまったく異なるマインドを持っている。見た目もどこか違っていて、街を歩いていると、その佇まいだけで「この人はシンガポール人かな?」「あの人は日本人だな」と、なんとなく見分けがつくのが面白い。

言いたいことはハッキリ言う

もちろん全員に当てはまるわけではないが、自分の考えをはっきり主張するシンガポール人は多い。日本では、上司からの指示にはある程度黙って従う傾向があるように思うが、シンガポールではたとえ相手が上司であっても、自分が納得できなければ反論される。新しい方針や指示を出す際には、しっかりとした理論武装をして臨まないと、逆にやり込められてしまう。

正直、時には面倒だと感じることもあるが、そのおかげで「どう説明すればスタッフに納得してもらえるか」を常に考える習慣が身についた。僕自身もしばしば噛みつかれるが、そうしたディスカッションを重ねる中で業務内容をより深く理解し、より良い形に昇華できたと感じている。ある意味、部下に鍛えてもらったようなものだ。

オンオフはきっちり分ける

彼らはオンとオフをきっちり分ける傾向がある。よほど急ぎの仕事がない限り、定時で上がってアフター5を満喫する。上司が残っているからといって自分も残る、いわゆる“付き合い残業”の発想はまったくない。仕事が終われば、即帰宅だ。

たまに急ぎの仕事を頼んでも、当然のように定時で帰ろうとするので、こちらが"Oh wait, wait!"となることもある。それだけ、彼らにとってプライベートの時間は大切なのだ。

有給は全て消化する

日本人の感覚からすると、有給休暇は「取得する権利」ではあっても、それをすべて使い切ろうとする人は少数派かもしれない。しかし、シンガポールではその考え方がまるで違う。有給休暇は「会社から与えられた当然の権利」であり、使い切ってこそ価値があるものと捉えられている。

実際、年に数回、1〜2週間の長期休暇を取得して海外旅行に出かけるスタッフも珍しくない。そしてしっかりリフレッシュして、また職場に戻ってくる。次のバケーションを楽しみに、日々の仕事に向き合う──そんな姿勢がごく自然に根づいている。

加えて、シンガポールでは「MC Leave(Medical Certificate Leave)」と呼ばれる病欠休暇が年間2週間分支給される。体調を崩してクリニックを受診すると、「休養が必要」と記載された診断書(MC)が発行されるのだ。実際は、軽い風邪でも数日分のMCを出してくれるクリニックが多く、なかにはこの制度をうまく活用して、MC Leaveを計画的にすべて使い切る強者もいる。

MC Leaveを全消化するかどうかはさておき、スタッフが気兼ねなく有給を取得し、仕事から一時的に解放されて羽を伸ばすことができる環境は、とても素晴らしいものだ。長期休暇を実現するには職場としての体制整備が不可欠だが、こうした働き方は日本の企業も見習うべき点が多いと感じる。

転職は当たり前

新卒で入社した会社に定年まで勤め上げるシンガポール人は、むしろ少数派だろう。業界によって差はあるものの、平均すると3〜5年ほどで次の職場へとステップを踏む人が多い。

人間関係のストレスなどを理由に退職するケースも少なくなく、正社員であっても驚くほどあっさりと職を変える。こうした背景もあり、人材の流動性が非常に高いのがシンガポールの労働市場の特徴だ。

その分、会社側の立場から見ると、人材の確保と定着はなかなか骨の折れる仕事だろうな、というのが正直な感想である。

少しトゲのある言い方に聞こえるかもしれないが、定時退社が当たり前で、有給休暇はしっかり消化でき、職場で無理を感じたら気軽に転職もできる。そんな柔軟で自由な働き方をしているシンガポール人の暮らしぶりは、全体として見ても、日本人と比べてはるかに幸福度の高いものなのではないだろうか。

多くがバイリンガル

ご年配の方の中には中国語しか話せないシンガポール人もいるが、多くの人が中国語と英語の二か国語を自在に操る。中には、これに加えて日本語まで流暢に話す強者もおり、言語面では東南アジアの中でもかなりのアドバンテージを持っていると言えるだろう。

彼らは幼少期から英語教育を受け、洋画を字幕なしで鑑賞し、洋楽にも親しんでいる。映画館では面白いシーンがあると、場内が一斉に爆笑の渦に包まれることもあり、その様子からも「欧米的な感性」を強く感じる。

シンガポール英語、いわゆるシングリッシュは広く知られている。幼いころからハリウッド映画を見て育っている彼らなら、きちんとしたアメリカ英語も話せそうなものだ。それでも、彼らはシングリッシュを話す。

以前スタッフに「どうしてもっとアメリカ英語に寄せないの?」と聞いたことがある。そのとき返ってきたのは、「なんで私たちが彼らに合わせなきゃいけないの?」という言葉だった。

まるでミルコのハイキックレミーの飛び膝蹴り同時に食らったような衝撃だった(古い…)。

僕たちはつい、英語といえば映画やドラマで見る「アメリカ人の英語こそが本物でカッコいい」という感覚を持ちがちだ。特に、幼少期をアメリカで過ごした僕にとって、その思い込みは根深かったのかもしれない。

でも、彼女のひと言が、その固定観念を見事に打ち砕いてくれた。英語を話す国の数だけ、英語のスタイルがあり、「これが正解」という形は存在しない。英語はあくまでコミュニケーションの手段にすぎないのだ。

もちろん、流暢に話せたらそれに越したことはない。でも本当に大切なのは、間違いを恐れずに自分の考えを伝えようとする姿勢だ。

少し脱線してしまった。

英語の話になったので、せっかくなのでシングリッシュをいくつか紹介したい。

"You can do it, lah" (あなたならできるわよ) 
語尾にlahやlorをつける使い方やニュアンスは文脈やイントネーションにもよるが、基本的には「親しみ」「強調」「和らげ」のいずれか。

"I go already" (私もう行ってきたよ)
alreadyを付けることで、過去形の意味合いを持つ。シンガポーリアンは本当によく "~already"を使う印象がある。

よく聞く会話としては、こんな感じ。

A: You want to eat chicken rice or laksa? 
B: Laksa lor. Chicken rice I eat yesterday already. 
(チキンライスかラクサどっち食べる?)
(ラクサかなー。チキンライス昨日食べたし)

A: Wah, so fast you finish your work!
B: Can lah, not difficult what.
(すごい、仕事早いね!)
(よゆー、よゆー)


可愛い小物が大好き

小さな子どもだけでなく、大人でもカバンに人形のストラップをぶら下げているシンガポール人は少なくない。男性であっても、自分のバッグにキャラクターグッズを付けていたり、オフィスのデスクに可愛い人形を飾っていたりする。

日本の感覚だと、こうした行動は「ちょっと痛い人」と思われてしまいがちだが、シンガポールではそうした趣味やオタク気質がネガティブに捉えられることはほとんどない。むしろ、個人の好みとして自然に受け入れられているところがあって、そこがまた面白いと感じる。

ストラップの人形をぶら下げた女性
GRABの運ちゃんも


タトゥー比率は高い

老若男女を問わず、タトゥーを入れているシンガポール人は本当に多い。最近では日本でも増えてきた印象はあるが、シンガポールの面白いところは、近所のおっちゃんやおばちゃんにも普通にタトゥーが入っている点だ。

オフィスでも、「えっ、君も入れてるの!?」と驚いてしまうような真面目なスタッフが、腕にさりげなくワンポイントのタトゥーを入れていたりする。もはやアクセサリー感覚なのだろう。

日本人的には「こんなに入れてて銭湯とか大丈夫なのかな…」と心配になるところだが、そもそもシンガポールに銭湯がないので、入店拒否を気にする必要なんてない。そういうカルチャーの違いもまた、面白さのひとつだ。

こちらの女性は左腕にアニメのタトゥー


バレンタインより旧正月

日本ではあまり馴染みがないが、シンガポールでは「旧正月(Chinese New Year)」を盛大に祝う。時期はおおよそ1月下旬から2月中旬ごろで、シンガポール以外にも、中国をはじめ、韓国、ベトナム、台湾などのアジア各国で行われている。

家族や祖先への感謝を表し、繁栄や幸せを願う行事であり、1年の中でもっとも大切にされている祝祭のひとつだ。別名「春節」とも呼ばれ、彼らにとっての「新年」は1月1日ではなく、この春節のタイミング。1月1日は単なる連休と捉えられているようだ。

以前、春節の長期休暇から戻ってきたスタッフが出社したのが2月14日だったので、「Happy Valentine’s Day!」と声をかけようとしたところ、「Happy New Year!」と先に言われてしまった。「あけましておめでとう、なのか…」と、文化の違いを感じた瞬間だった。

ちなみに、この時期には「ローヘイ(Yusheng)」という料理を食べる習慣がある。生の魚や千切り野菜、香辛料、ソースなどを混ぜた、いわば縁起物の料理で、豊かさや繁栄、健康を願う意味が込められている(日本でいうおせち料理のような存在かもしれない)。

「ローヘイ(撈起)」は広東語で「高く持ち上げる」という意味があり、食べる前に皆で箸を使って具材を高く持ち上げながら、願いごとやおめでたい言葉を叫ぶのが特徴的だ。オフィスの一角でみんなが一斉に叫びながら料理をかき混ぜている光景は、なかなか新鮮だった。

ローヘイを楽しむスタッフ


楽しいことが大好き

シンガポールの人たちは、基本的にお祝いごとが大好きだ。オフィスで仕事をしていると、「今日は〇〇の誕生日だよ!」と声がかかったり、隣のチームからのおすそ分けと称して、座っているだけでさまざまなスイーツが配られてきたりする。

また、会社としても社員同士の親睦を重視しており、しっかりとした親睦会予算が組まれている。年に一度は「D&D(Dinner & Dance)」と呼ばれる慰労イベントが開催され、食事やショー、抽選会などが行われるのが恒例だ。


仕事中にスイーツが運ばれてくる


日本が大好き

日本に対して好意的な印象を持ってくれているシンガポール人はとても多い。僕が日系企業で働いていることを差し引いても、多くの人が日本の文化に興味を持ち、ポジティブに受け止めてくれていると感じる。

興味深いのは、欧米への関心がそれほど高くないことだ。長期休暇を使って旅行に出かける際も、行き先は日本や韓国、台湾など東アジアがほとんど。北米が遠いという地理的な理由もあるかもしれないが、それ以上に「アジアの文化」への関心の高さを感じる。

そんな中で、日本に対して特に良い印象を持ってくれているのは、とても嬉しいことだし、その期待に応えたいと思わずにはいられない。


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