記録する212:創作物語「おもしれー女」
昔々、あるところに「おもしれー女」という名前の女がいた。
けれどその女は、ちっとも面白くなかった。
名前負けも甚だしい、ただのつまらない女だった。
「このままじゃ、名に恥じる!」
女は一念発起し、お笑いの道を志すことにした。
面白くなるには、まずは養成所。吉○にワタ○ベ、有名どころをいくつも受けてみたが——
全部、落ちた。
女は考えた。ならば、大学に入ってお笑いサークルに所属しよう、と。
目指すは難関大学。挑戦は一度きりだが——
見事合格した。
晴れてサークルに入った女は、自身を面白くしてくれる相方を探した。けれど——誰も手を挙げてくれなかった。
面白くない人間とは、誰も組みたくないのだ。
「面白くしてもらおうだなんて、甘かったのね……」
女は大学を中退した。
何もかもを失った女は、こう思った。
「私は“おもしれー女”にはなれない。でも、生きてくには働かなきゃ」
職歴も学歴もない。でも“あの大学に受かった”という事実だけはある。
女はそれを活かし、塾の講師になった。はじめはアルバイト、やがて社員に。努力の末、生徒を次々と合格に導く名物講師となった。
ある日、生徒の一人が言った。
「先生の授業、わかりやすくて……面白い!」
そう、女の“おもしろさ”は舞台やネタではなく、教室の中でこそ輝くものだった。
かくして女は、「おもしれー女」として、幸せに暮らしましたとさ。
おしまい。
いいなと思ったら応援しよう!
あなたの想いが、新しい文章を生み出す力になります。チップでの応援は、これからも誰かの心にそっと寄り添う言葉を届けるために使わせていただきます。