社会人大学院で情報科学の修士号を取って得たもの
2021年3月に、北陸先端科学技術大学院大学(通称 JAIST)の東京社会人コースで修士課程を修了し、情報科学の修士の学位を得た。
文系の学部卒だったぼくが、JAIST 社会人コースでの修士号の取得によって得たものと失ったもの(費やしたもの)を書きたい。
(卒業してからすでに 3 年半以上の月日が流れてしまったため、覚えていない詳細は多いものの…)
得たもの
学位(情報科学修士)
言うまでもないが、学位を取得した。

昭和生まれはもう隠しません。
これは入学する際の大きな目的の一つだったため、とても嬉しかった。
文系の学部卒の自分にとって、情報科学の修士号には憧れがあった。
でも、学位記が届いたときだけはじんわりとしたものの、それ以来、特に実感めいたものはない。
コンピュータサイエンスの基礎科目の習得
これも目的の一つだったので、とても満足。
ぼくは下記のような科目で単位を取得した。

他にも履修届を出した科目は複数あったものの、途中で忙しくなったりなどで断念した科目もあった。
JAIST では、コンピュータサイエンスの基礎科目は大方網羅して開講していると思うが、東京の社会人コースでは開講が少なかったり、スケジュールの都合で受講しにくい科目も若干ある。(シラバスはこちらに公開されている)
ぼく個人的には、コンピュータサイエンス関連の科目は、独学時代も含めてだいたい学習した気がしている(独学に関してはこの記事に詳細あり)。
ただ、言語処理系(コンパイラとか)に関しては、まだまだ理論・実践ともに勉強し足りていない感じがあるため、いつか機会を作ってちゃんと学習したいと思っている。
理系における研究の手法
これも目的の一つだった。
文系の論文(卒業論文)を書いた経験しかなく、理系の学問において「研究はどのようなものなのか」「どのように進めるのか」ということを、身を持って知りたかった。
正直、修士に求められる研究は、「研究の入口」程度のレベルでもなんとか合格をもらえる。
自分も大した研究ができたとはまったく思っていないが、論文の読み方・探し方・書き方の基礎に関してはなんとか身につけられたと思っている。
自信
それまでうっすら感じていた、情報科学の修士を持っている人への憧れやコンプレックスがなくなり、自分の自信につながった。
というより、別に情報科学の修士を持っているからといって、それがまったく特別なことではないということがわかった、という方が正しい。
ぼく自身はそれなりの量を勉強したことは間違いないと思うが、それでも各分野のほんのさわりを勉強した程度のものだ。
ハードウェアや OS なんて、まだまだまったく「よくわかってるレベル」には達していない。
さらに、コンピュータサイエンスの基礎的な科目の単位を取ったといっても、勉強の量や習熟度さえもひとそれぞれだし、科目の取り方もみな異なる。
研究の成果をどれくらい残せたかも人によって全然違う。(ぼくは大した成果は出せなかった)
自分を含めて「情報科学の修士」を持っている人だからといってその事実自体には特別なことはなにもない、ということがよくわかった。
それはとても大きな収穫だったと思う。
失ったもの(費やしたもの)
時間
時間は正直かなり費やした。
既にずいぶん前のことなので、定量的に書くのは難しいが、単位を取得した授業は、ほぼ全て講義には出席した。(オンラインで配信されているような授業は、1.25 倍速〜1.5 倍速で視聴したものもあった)
宿題やレポート、試験前の勉強も、しっかりと時間を取った。
いまは子どもが 2 人いるのだが、現在の家庭の状況であれば確実にそれだけ大学院に時間を使うことはムリだったと言える。(後述のように、当時は仕事にも全力投球できていなかった)
ただ時間とエネルギーのかけ方は、科目の選び方や研究への取り組み方でずいぶん変わると思うので、子どもが小さいからといって修士を取るのは一律に厳しい、ということではない。(が、大変であるのは間違いないと思う)
お金
入学金が 30 万弱、学費 50 万強(1年分)の 2 年間分で、合計約 130 万円。
教科書等が購入必須な授業はあまり多くなかったように思う。(資料が配られる授業が多かった)
数字だけ見ると金額は安くないように見えるが、上述の「得たもの」は自分にとって決してお金には換算できない価値があるので、「お金を使った」という感覚はまったくもってない。
文字通りプライスレスな幾多のものを得ることができたと思っている。
なお、JAIST には長期履修制度という、2年間の課程を 3 年間かけて修了できるという制度がある。
ぼくが入学したときには 4 年間に延ばすことができたため、ぼくは 2 年間分の学費で 4 年間在籍できた。
仕事へのコミットメント
上記の通り、ぼくは 4 年間かけて修了したのだが、その 4 年間、仕事に全力投球していた時期は、通算 1 年半あるかないかといったところだ。(「全力投球」の定義にもよるが、ぼくの場合は生活のかなりの部分を仕事に捧げること)
フルコミットできていた期間は、授業をほとんど取らず、研究もそっちのけになっていた時期であり、それ以外の間には、仕事と大学院と家庭をバランス良くやっていくことはとても難しかった。
まとめ
いま考えると、4 年間もの間よく頑張った(最後までやる気を維持できた)と思う。
最近子育てに忙殺されているため、仕事をしながら学業も両立しようなんていう気力はなかなか起きない。
人生のそんなフェーズが訪れる前の、あのタイミングで修士を取れたことはとても良かったと思う。
すでに 3 年半以上の月日が流れて、在籍していた頃や卒業したばかりの頃の気持ちは薄れてしまい、どこか冷めてしまった感覚は否めないが、総じて、自分は JAIST で情報科学の修士号を取れたことはとてもよかったと思う。
その経験ができた人生で本当によかったと思っているし、JAIST を卒業したことは誇りにも思っている。
担当教官の先生をはじめ、多くの素敵な先生方や多くの同志の方との素敵な出会いもあった。
ふと思い出すと、品川のあのビルに通っていた時期が懐かしい(※東京社会人コースは品川にサテライトという名のちっこいオフィスみたいなのがあります)。
勉強も研究も、大変なことも多かったが、新しいことを知ること、学ぶことはとにかく楽しかったし、好奇心が満たされていく感覚はこれ以上ないほどの幸せに満ちた体験だったと思う。
情報科学の修士を取りたいと少しでも思っている人は、JAIST への進学もひとつの選択肢として検討してみるのはよいと思う。
