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上海16区物語

はじめに

 世界の大都市で、東京23区の様に都市中心部を行政区で分けている所は幾つもあります。

パリ(フランス):20区
ニューヨーク(アメリカ):5区
ロンドン(イギリス):33区(32区+シティ・オブ・ロンドン)
ベルリン(ドイツ) :12区
上海(中国):16区
北京(中国):16区
ソウル(韓国):25区
バンコク(タイ):50区
ホーチミン市(ベトナム):22区
ブエノスアイレス(アルゼンチン):15区
サンパウロ(ブラジル):32区
メキシコシティ(メキシコ):16区

 でも、区の名称までとなると、住んだことがある方でもなければ全部言える方は殆どいないかと思います。全部言える必要性があるのかどうかはともかく、上海市についてちょっと見てみましょうか。


租界時代を外しては語れない上海市

 この記事を書くにあたり、現在の上海市の賑わいとスタイリッシュな街並みは、租界時代、特にフランス租界を外しては語れ無いということを知りました。租界時代を経たことが結果的に上海の価値を大きく押し上げています。租界とは治外法権の外国人租借地の事で、上海租界は19世紀半ばから20世紀半ばにかけて下記の地図の位置に設けられました。そこが租界でなくなった現在も、当時の遺産である洋館や西洋的なライフスタイルにより、高級なエリアとして君臨し続けています。

地図情報センター様 地図情報第30巻1号より
着色されている部分が租界で、黄色はフランス租界。日本租界があったのはオレンジ色の共同租界部。

上海16区の成立

 上海市が16区になったのは2016年。租界時代に租界を北市、その南側の上海市旧市街を南市と称していたのに由来する南市区の黄浦江東岸が1993年に新たに開発された浦東新区に編入、黄浦江西岸が2000年に黄浦区に編入され、2011年に卢湾区と黄浦区が合併して新生黄浦区に、2015年10月に闸北区と静安区が合併して新生静安区に、そし2016年に崇明県が崇明区に昇格して16区となったとの事です。私が中国に関わる様になった2009年以降に合併や新設があったなんて、全く気付いていなかったので、びっくりです。

上只角と下只角

 東京に山手と下町があるように、どの大都市にもこの概念に近いエリア区分があり、上海市も例外ではないありません。「上只角」と「下只角」は上海話(上海方言)で言うそれに相当するものです。

上只角(シャンヅージャオ)

「上只角」は、これが正に租界時代という歴史的背景により形成された「高級で洗練された地域」という社会・文化的概念です。現在でもこれらのエリア(特に「梧桐(プラタナス)エリア」)の洒落た街並みや、石造りの洋館は上海市に高級なイメージを与えています。

  1. 位置:上海市中心部の西側~南西側(苏州河の南、旧租界地域)。

  2.  特徴:旧租界時代から発展した高級住宅街・繁華街。広い道路、プラタナス(梧桐)の並木、洋館や高級アパート、高級ショップ、レストラン、文化施設が集まる。

  3.  イメージ: 歴史的に外国人や富裕層、知識人が多く住み、「洗練された」「高級な」地域

    現在の行政区で言えば、主に以下の区の一部(特に中心的なエリア)が「上只角」に該当します:
    静安区(特に南京西路、静安寺、愚园路周辺)
    徐汇区(特に衡山路、武康路、淮海中路西側、建国西路、永嘉路、汾阳路周辺 = 「梧桐エリア」の中心)
    长宁区(特に新华路、愚园路西側周辺)
    黄浦区(旧卢湾区部分:淮海中路東側、新天地、思南路、瑞金二路周辺)

下只角(シャーヅージャオ)

 上記以外の、主に上海の旧市街地や、租界地から見て郊外にあたる地域。所謂ダウンタウン。「下只角」という言葉には、かつては貧しい地域、あるいは文化的に劣った地域といった意味合いが含まれていましたが、上海の発展とともに、その意味合いは薄れてきています。

1. 位置∶主に苏州河(呉淞江)の北岸(闸北、杨浦など)
旧市街の東部・北部(現黃浦区の小南门やあたり、虹口の労働者居住区など)

  1. 特徴∶租界時代に工場地帯や労働者階級の居住区として発展。インフラ整備が遅れ、住宅は老朽化した「棚户区」(バラック密集地域)が多かった。
    かつては「上只角」と対比され、貧困・環境悪い・教育機会が少ないというネガティブなイメージが付随していましたが、1980年代以降の都市開発で多くの棚户区は再開発され、市政府主導により苏州河の汚染も解消され、現在は高層マンションや商業施設が立ち並ぶエリアも多くなりました(例:蘇州河沿いの芸術区「M50」は旧紡績工場、天安千树は旧上海面粉厂(上海製粉工場))。

    3. 該当する主なエリア(現在の行政区)  
     闸北区(現在は静安区に統合): 特に苏州河北岸一帯。  
     杨浦区: 工業地帯として発展した地域(例:定海路街道周辺)。  
     虹口区の北部: 四川北路より北の労働者居住区。  
     普陀区の一部: 苏州河沿いの工業地域(例:潘家湾)。
     黄浦区の一部: 旧南市区のエリア。老城廂(旧市街)の密集した住宅地。

上海16区はこれだ

 上海市の16区の名称は以下の通り。
現在の行政区と完全には一致しませんが、大枠で上只角と下只角に分けてみました。この2つに分類されない郊外の、元々は農地が主体だった新しい区は、ここでは郊区として分類しました。
カタカナは日本語の音のイメージ。

上只角

 1. 黄浦区(Huangpu、黄浦、ファンプー)
 ※南東部の一部、旧南市区部は下只角
 2. 徐汇区(Xuhui、徐匯、シューフイ)
 3. 长宁区(Changning、長寧、チャンニン)
 4. 静安区(Jing'an、静安、ジーアン)
 ※旧闸北区部分は下只角

下只角

 5. 普陀区(Putuo、普陀、プートゥオ)
 6. 虹口区(Hongkou、虹口、ホンコウ)
 ※南側を除く
 7. 杨浦区(Yangpu、楊浦、ヤンプー)

郊区(近郊・遠郊)

 8. 闵行区(Minhang、閔行、ミンハン)
 9. 宝山区(Baoshan、宝山、バオシャン)
10. 嘉定区(Jiading、嘉定、ジャーディン)
11. 浦东新区(Pudong New Area、浦東新区、プードンシンチュー)
12. 金山区(Jinshan、金山、ジンジャン)
13. 松江区(Songjiang、松江、ソンジャン)
14. 青浦区(Qingpu、青浦、チンプー)
15. 奉贤区(Fengxian、奉賢、フォンシェン)
16. 崇明区(Chongming、崇明、チョンミン)

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上海16区各区について語る

 ここからは16区1区1区それぞれについて蘊蓄を傾けます。馴染みのなかった郊外の区にも、興味が沸くかも?リンク先があるのは私が行って書いた記事があるところです。なお、写真は全て私自身が撮影したものです。

1. 黄浦区(Huangpu、黄浦、フアンプー)

常住人口:約51万人
面積:約20平方キロメートル

ザ・上海
 恐らく皆さんが上海と言って最初に思い浮かべる場所の数々がある区です。上海の最も中心的な地域の1つで、上海人民市政府があり、700年以上の建設史があり、現在も国際金融・貿易の中心地で、16区中、最も威張っている区だと思われます。下記の地図を見ていただきますと判ります通り、見どころ満載で、初心者はここだけで終わる可能性もある区です。全体の右半分が以前からの黄浦区、左側が旧卢湾区のエリアです。

観光地: 外灘(ワイタン)、南京路歩行街、豫園、新天地、田子坊。
主な地下鉄駅: 南京東路、打浦橋、一大会址·新天地、豫園、上海复星艺术中心
筆者お薦め: 外灘の夜景(含むバンドセンター)、打浦橋駅直結の大フードコート日月光中心、上海潜艇展覧館、新世界大丸百貨店、ユニクログローバルフラッグシップ店

豫園
外灘
バンドセンタービル。2010年頃は日本の大手電機メーカーや大手化学メーカーの支店が入っていました。
インターコンチネンタル上海瑞金(旧瑞金賓館)
上海人民市政府
国泰电影院(このはす向かいがユニクログローバルフラッグシップ店)

2. 徐汇区(Xuhui、徐匯、シューフイ)

常住人口:約110万人
面積:約55平方キロメートル

旧フランス租界の中心地・オシャレで意識高い系
 上海の発展と言えば、フランス租界の存在が欠かせない。その、元フランス租界の中心的な地区で、日本在住の上海人曰く「上海の港区」。プラタナス街路樹の両側にお洒落なお店や雰囲気のあるレストランが並ぶ衡山路や武康大楼のある武康路が有名。富裕層の住居や政府高官の宿舎も多いとの事。また上海南西部の副都心徐家汇(シュージャーフイ)は付近には美し過ぎる公立図書館・上海徐家汇书院、中国に珍しい宗教施設・聖イグナチオ教会、ヲタクの殿堂・美罗城がある。また、理系大学の雄・上海交通大学、華東理工大学、復旦大学医学部等がある文教地区でもあります。

観光地:衡山路(元フランス租界)、武康大楼、聖イグナチオ教会
主な地下鉄駅: 徐家汇、衡山路、上海体育馆、上海南
筆者お薦め: 上海徐家汇书院一尺花園(古城公園店)、环贸iapm商场(おしゃれなショッピングモール)、成隆行蟹王府·宴会厅(淮海店、上海蟹専門店)、鐘書閣・上海绿地缤纷城店

聖イグナチオ教会。中も見学出来る。

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