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千視千聴山探索調査書_2025


2025/5/20 注釈部
記録:南愚鳩川第七高校注釈部 部員B

  • • 調査日:令和7年5月20日(木)

  • • 調査地:千視千聴山(南愚鳩川町管轄区域内)標高642m

  • • 天候:快晴、気温31℃、風速3.1m/s

  • • 同行者:部員A、部員B(ともに第七高校二年)、「注釈」フクロウナギ

  • • 目的:定期調査

千視千聴山探索にあたり

 南愚鳩川第七高等学校の注釈部では、毎年千視千聴山への調査を行なっています。これは、新しく発生した注釈を観測するほか、現在確認されている注釈の活性化状況を記録するためです。
 この調査は事前に入山申請を届けた上で、十分に安全に配慮した上で行ったものです。申請なしの入山や、十分な知識なく入山することは絶対にやめてください。

記録

8:00

当山麓に集合。当山内部は常に甘露の雨※1が降っているため、各部員は傘を携帯している。※2

※1 注釈を活性化させる働きをもつ、注釈現象の一つ

※2 ※フクロウナギに関しては、甘露の雨の影響が少ないことを事前に確認している。

千視千聴山麓

8:05

入山開始。麓には自然生物も数多く生息しており、単独の注釈はあまり見られない。甘露の雨の強さは平均的だった。

甘露の雨の影響を受けた森林

8:35

植物の少ない中腹地帯に到着。しばらく探索したところ、新しくオオアリクイの注釈を発見した。行動パターンなどから凍った注釈と思われる。

※凍った注釈とは、主となる人間がすでに他界した注釈の一部が独立して存在している状態のこと。凍った注釈が眠るのには長い時間がかかる場合が多い。

オオアリクイの注釈

また、その近辺には巨大なクスノキの注釈を観測した。これは6年前より毎年同じ位置に観測され続けているものであり、毎年形状に軽微な差はあるものの、概ね変化なく安定して存在している。

クスノキの注釈

9:05

金腕地帯に到着。ここは金色の人間の腕のようなものが散乱しているような見た目の注釈現象であり、局所的に注釈が少ないことで知られている。

金腕地帯(周囲に注釈が見られない)
この地帯でよく見られる「黒曜」(全てが一体の注釈であると推測されている)

当地帯探索中、人格を有する注釈現象のトラディメラさんに出会う。当山に詳しいらしく、以降の探索を案内していただくことになった。海洋から生まれた注釈現象で、特定個人に帰属するものではないという。

トラディメラさん(今回の調査書の執筆、共有をご快諾いただいた)

9:40

8号目付近に到着。トラディメラさん曰く、ここは注釈の発生率が高いエリアらしい。巨大なヤドカリの注釈、コイの注釈を発見。いずれも危険性はないが、非常に活性化しており注意が必要。

トラディメラさんの案内で、注釈現象によって発生した一軒の古屋を調査した。内部に他の注釈の存在は見られなかったが、一枚の紙を発見した。(下に掲載)

「トラディメラ」とみられる記載があるが、本人曰く、これはおそらく自分のことを指しているのではないという。

昨年以前にはこのような古屋は発見されていなかった。
古屋に残されていた手記

【内容(推定)】
あの子はこの山の上で全てを見ているらしい
一人にしてごめん 
いや、違う
作ってしまってごめん
愛してる 
トラディメラへ

10:20

暫く古屋の周囲を調査していたところ、海洋淵接面を発見しました。トラディメラさんと関連があるようです。安全性の観点から山頂へ向かうことに懸念もありましたが、相談の結果向かうことに決定しました。※

※基本的に海洋淵接面は海洋に関連する強力な注釈が近くに存在することを意味します。

海洋淵接面

10:55

山頂に到着。開けた場所には巨大な眼球の注釈が存在していた。

凍った注釈だった

その後、トラディメラさんとその注釈が対話を行った。トラディメラさんの要望から、以下対話の記録を掲載する。

トラディメラさん:
あなたは私の始まりなんでしょう?あなたは世界に知られる前の私なんですよね。

眼球の注釈:
全てを視認しています。

トラディメラさん:
私は、不特定多数の認識を受けたあなたです。その姿になる前のことを、覚えていますか?

眼球の注釈:
悲痛が支配しています。

トラディメラさん:
あなたは保険じゃない、予備でもない、幽霊でもないんです。それを、思い出してください。

眼球の注釈:
それは異なります。

トラディメラさん:
…傘を、どうぞ。この雨は、あなたの心を癒してはくれないでしょう?

眼球の注釈:
……

トラディメラさん:
あなたが、昔そのようにしたのでしょう?

眼球の注釈:
…結末は訪れてしまったから。世界と自我が切り離されて、私だけが取り残されてしまった。

トラディメラさん:
でもあなたの視界には、輝きも映っているはずです。

眼球の注釈:
どうして?あの人の物語が続いているっていうの?

トラディメラさん:
いいえ、あなたの物語が続くんです。あの人は誠実だったから。

眼球の注釈:


眼球の注釈:
…呪うからね


以上のやり取りを通して、眼球の注釈は眠りにつくことができた。

総括

 本調査において、千視千聴山内の注釈現象は、前年度比で大きな変化は見られなかった。特にクスノキの注釈は安定して観測され、活動状況も例年通りであった。

 一方、新たに、オオアリクイ、ヤドカリ、コイの注釈が確認された。これらは昨年度の調査では未確認であり、引き続き定期的な観測が必要とされる。また、調査中に人格を有する注釈現象のトラディメラさんと接触し、その案内により山頂までの調査を実施した。トラディメラさんは今後、当山の保全活動も行なっていくという。

 なお、山頂付近で確認された眼球の注釈は凍結状態であり、対話の後に眠りについたことが確認された。対話の後半、眼球の注釈の発言に意思や感情があるように見受けられる。本件に関しても整理・分析を進めていきたい。

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