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ローリング・サラリーマン詩篇    chapter 17: FAREWELL PARTY

君は僕が初めて面倒を見た後輩だった。その時僕はたしか入社七年目で、仕事を覚えて自分なりに工夫やアピールが出来るようになって、取引先とも飲みに行けるような関係を築いて、このまま経験と比例する線を描いて自分はもっといい仕事が出来るようになると信じていた。だから上司もそんな僕を教育係にしたのかもしれない。

君はそんなテンションの高い僕に付いて、ほんとによく勉強していた。今でも覚えている。僕や他の先輩がすることをメモしたノートを持ち歩いていた。「こんなのメモしなくていいよ」何回も言った。競合他社の仕事をこまめに集めたノートも作っていた。「おまえすごいな」それも何回も言った。朝出社したら、夜別れた時と全く同じポーズでデスクにいたこともあったな。

勢いでは勝ってるけど、努力では負けてるって分かっていた。

君が五年目になった頃には、もう企画では追い越されていた。僕の方が上手いのはネゴだけだったな。だから僕たちはいっしょに仕事をすることがなくなった。会社も同じような人間を同じ仕事に二人も入れる余裕はないしね。いや違うな。僕が君と仕事をしなくなったんだ。君はもう他のチームからどんどん仕事の依頼をされるようになっていたからね。僕は君の評判がいいのがほんとにうれしかった。あれほど努力したのだから、当然だって思ってた。誰よりも知っていたからね。

君が今年、会社を辞めるって言ってきた時、すぐ「やったな、おめでとう!」って言ったよな。独立するってピンと来たんだ。そして、もう二度といっしょに仕事がすることがないと思って、それで、僕はなんというか、少しほっとしたんだ。これは、そうだな、いっしょのチームで仕事して、自分よりいい働きを見せられるのが不安だったんだ。

それで今、送別会で君は挨拶をしていて、僕への感謝の言葉を笑顔で喋っていて、先輩の僕がかっこよく見えたとか言っていて、ほんとに恥ずかしいからやめてくれよ。調子に乗っていただけなんだよ。君は人を見る目だけはないんだな。

そして、僕はまだ訳が分からずに気の効いた言葉がみつからないんだよ。鍼灸師になるって、どういうことなんだよ。そんなことに興味があるなんて言ってなかったよな。その職業をバカにしてるわけじゃないぞ。だけど、これまでやってきた仕事と全く関係ないだろう。君のスキルも評判もまったく活かせない世界だろう。どういうことなんだよ。

僕が分かるように教えてくれないか。そこに何をみつけたんだよ。ここにない何をみつけたんだよ。



〜『ローリング・サラリーマン詩篇』chapter 17


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