命の危機より Snow Manだった話
今年の仕事始め、仕事であるお家に行った。
意思疎通はほぼ不可で、時として殴ってくる初期老年期男性の自宅。
基本的に2人以上でペアを組んでの介入で、お家にはその方の面倒を見ている母親がいつもいる。ご本人の息子さんも同居しているが、たしか仕事でトラブルを起こして今は無職だ。
16時半、約束の時間。
相方が来ない。
困った。
まぁお家の中にはお母さんがいるはずなので、「お邪魔しまーす」と言いながらとりあえず家の中に入った。
「あ、今日ばぁちゃん居ないから勝手に入っていいよー」
ご本人の自室の手前、万年床の上でタバコをふかしながら息子さんが答える。
…マジか。
これはヤバいやつだ。
この息子さん自身も刺激してはいけない雰囲気むんむんだ。
とりあえずふすまの向こうのご本人に声をかけてみる。
「こんにちはー、◯◯です。開けてよろしいでしょうか?」
取手に手をかけたと同時に急にふすまが開いてご本人が顔を出し、体感20cmの距離で目が合った。
「ぎゅあぁぁぁ!!」
誰の声だ? 私か。
刺激してはいけないのに…まぁ無理だよね。
刺激厳禁系男子二人に挟まれているこの状況。
さぁどうしたもんか。
とりあえずここは退避だ。
気がつけばご本人はジリジリと距離を詰めてくる。
…殴られる。
私もそれなりに経験はある。でもさすがにこれは足がすくむ。
怖い。
付けっぱなしのテレビでは夕方のニュースが早口で読まれている。息子さんのタバコの煙が立ち込めて、冷静な思考を奪っていく。軽く足踏みしながら身体の震えを必死に隠す。
『『カリスマックス!!』』
……は?
唐突に流れるカリスマックス。
何かと思って振り返ると、テレビの芸能コーナーで年末のカウントダウンLIVEの様子が映し出されていた。
『ぎゅあぁぁぁ!! Snow Man!!!!
がっごいいぃぃぃーーー!!!!!』
誰の心の声だ? 私か。
脊髄反射で反応していた。
相変わらずご本人はジリジリと距離を詰めてくる。
テレビでは全力笑顔の我が推したち。
こっちのじっとり緊迫した世界と、テレビの向こうのMAXキラキラの世界。温度差すごすぎて画面が結露しそうだ。
ヤバい…なんかウケる…
っていうか殴ろうとしてるとこ ごめんね!
わたし今ちょっと Snow Man観てっから!
忙しいから!
あ、ニュース終わった。
えーと……なんだっけ、そうだ退避だ退避。
「ちょっと確認したいこと思い出したんで出直しますねー!すぐ戻りますぅ」
誰に言うわけでもなく空中に言い放って、私は玄関の外に出た。
一旦 Snow Manに意識行ったことで脳が覚醒し、正気を取り戻せた。
あー、ヤバかった。
いや、一番ヤバいの私じゃん?
どいつもこいつもCrazy Crazy Manの中で
Most of Crazy Woman 私じゃん?
なんか知らんけどこの戦い、勝った気がした…
とか思ってたらペアの人がやっと到着した。
まあその後の詳細は省くが、再び家の中に入ってご本人なだめてミッションコンプリート。
さぁとっとと帰って芸能ニュースチェックしなきゃ。
ところでこれ、何の話でしたっけ?
