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牛込神楽坂、わたしの名店

その街を一度訪れた日から、いつか住みたいと思っていた神楽坂。

あ、この街に住むひとたちはここが好きなのだな……ということを教えてくれる街路灯。街路灯といえばヨーロピアン仕様一択になりそうなものだけれど、神楽坂のそれは行灯のような日本らしい意匠で街並みによく似合う。そして古くなったスピーカーから商店街に鳴り響く陽気な音楽、行き交う老若男女。

老いも若きも、あらゆる世代の人がちゃんと生活している街が好きだ。若者ばかり、老人ばかり、子育て世代ばかり……と偏りがあると、何だか少し落ち着かない。お洒落した人も、銭湯帰りのあっぱっぱー姿も、酔っ払ったサラリーマンも、色んな人達が安心した顔で坂を行き交う。

「神楽坂に住み始めたよ、と言うと決まって食通たちから「我が最高の神楽坂飲食店リスト」が送られてきた。神楽坂は食通の集まる街である。私は家で食事することのほうがずっと多いのだけれど、たまにふらりと神楽坂を上ったり下がったり、路地に入って行ったりしながら、好きな店を見つけていった。

かつて「ホン書き旅館」だった和可菜


ワインバーで中華料理を出してくれるMUSHINは、酢豚がびっくり転げるほどに美味しい。酢豚って好き嫌いが分かれそうなものだし、私はどちらかといえばあまり……だったのだけれど、MUSHINの酢豚はカリっと甘く、びっくりするほどに美味しい。そこにパイナップルではなくつやっとひかる苺が入り、その酸味とさわやかさがたまらない。

地下にある居酒屋「鳴魚」は何を頼んでも美味しいし、その隣にあるSAKE BARオトナリは酒好きの立ち飲み客たちでいつも賑わっている。新潮社の眼の前にある「魚匠」のトマトラーメンが好きで、打ち合わせの行き帰りに食べるのが楽しみだった。

食と関係ない話をひとつ挟むと、神楽坂には工芸青花がある。「神楽坂には工芸青花があるし……」というのも私があの街に住む理由の1つになった。何度か展覧会に訪れたけれど、赤穂緞通 六月の展覧会ではあの空間にある赤穂緞通があまりにも美しくて、いまでもずっと余韻が残ってる。



そして最後に、一番よく行った飲食店がオールドタイランド。無類のアジア料理好きの私と夫にとってここはもう最高の……と、この話はasta*という雑誌にエッセイを寄せたので、それをここでも全文紹介させてもらいましょう。


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「あのガパオだ」

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