クッキー缶鑑賞 #12.5
一方こちらは、以前ミュシャ展のミュージアムショップで購入したサブレ缶。完全にひとめ惚れ。


アルフォンス・ミュシャの描いた《モナコ・モンテカルロ》は、フランスの豪華列車の旅を宣伝するポスター。
はあっと吐いた息を手で覆うような女性のしぐさは、「復活」の比喩と考えられている。
花環や祈りのポーズを用いて、見る者の目線を下から上へと誘導する構図。メディアとして機能したポスターの中で、文字情報を記憶させる狙いがあるという。

アール・ヌーヴォーのやさしげな曲線美に身を包むペコちゃん。ふふ、と思わず口角が上がってしまう。
そうだ、ペコちゃんも丸いもんね。
ふくよかなラインは、優美な曲線とマッチしているように思える。
彼女はなんとなく"子どもらしさ"を携えているけれど、神秘的な装いもコスプレじみていて可愛らしい。
頭髪を装飾しているのが、ざくろの花とペコちゃんのリボン。
毛流れにもいつもより細さが際立って、フェミニンな印象を与えている。

顔や腕はデフォルメされているのがよくわかるけれど、
ちらりと覗く右足も、原画より短めに設定されているのがわかる。
そしてカラー。
淡いセージグリーンとゴールド調のふち取りが彼女らの気品を引き立てている。
ボタニカルな主題を纏う女性が、ポスターに神聖さを組み込む。
縦長の絵画と現実世界とのあいだにあるフレームは、奥のほうにある絵画世界を不確かなものにしている。
そんな、あたたかさと涼しさが共存するような色合いが、わたしたちの五感に訴えかけるのだと思う。

「線の魔術師」と呼ばれたミュシャは、ジャポニスムと相互に影響を及ぼしあった画家である。
広告媒体にすぎなかったポスターを価値ある作品へと昇華し、大衆へ向けた芸術に傾注していたのだ。
例外なく、わたしたちを取り巻くあらゆるものに芸術を見出した画家たちがいた。
そうしてやがてそれら対象が、商業的な意味合いを持つようになる。
今手にしているこの缶も、その流れによる産物というわけだ。
しかしまったく、ペコちゃんのカメレオン俳優っぷりには惚れぼれする。
SWIMMERに然り、展示会のタイアップに然り、
絵柄・図像さえ捉えていれば、不二家というブランドのイメージを保ったままペコちゃんをアイコンに構えることが可能になる。
「PEKO」のロゴさえ響きにもオリジナリティがあって…字体を変えて世界観に染まれるのだ。
舌を出す仕草、おさげ髪に赤のオーバーオール。
さまざまなシーンでの抽象化に堪えうるペコちゃんのポテンシャルとは一体。
不二家 NEWS RELEASE 2019年3月1日
「ミュシャ作品の世界と ペコちゃんがコラボ!展覧会『みんなのミュシャ』限定オリジナル缶 ペコちゃんサクサクサブレ(5枚入)」
https://www.fujiya-peko.co.jp/assets/pdf/press20190301_1.pdf
こちらのサイトでは、ミュシャの絵画におけるデザイン・テクニックが語られている。今なお日本人に広く愛される理由がわかるかもしれない。
