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ギャビン・ニューサム知事、民主党の将来の大統領候補

1.はじめに

ギャビン・クリストファー・ニューサムは、2019年より第40代カリフォルニア州知事を務めるアメリカの政治家。高身長でカリスマ性があり、民主党の将来の大統領候補としては、いつも筆頭に上がる人物だ。最近では、2025年8月に「The Patriot Shop」というオンラインストアを開設し、赤いキャップやTシャツ、さらには「$100の署名入りバイブル(Holy Bible)」など、トランプの“MAGAスタイル”を皮肉ったグッズを販売し、トランプ大統領を挑発している。例えば、赤い帽子には「NEWSOM WAS RIGHT ABOUT EVERYTHING!(ニューサムはすべて正しかった!)」と書かれており、MAGA帽に対抗するようなメッセージ性をアピールしている。このグッズは発売から24時間で30万ドル以上の売上を記録し、民主党支持層を盛り上げる戦略的パフォーマンスとして注目を浴びた。今回は、このニューサム知事を取り上げる。

2.ギャビン・ニューサム知事

生い立ち

ニューサムは1967年10月10日、カリフォルニア州サンフランシスコで生まれた。父ウィリアム・ニューサム3世は弁護士であり、後にカリフォルニア州控訴裁判所判事も務めた人物で、石油企業ゲティ社(Getty Oil)の顧問も務めた。曾祖父にはスタンフォード大学医学部教授のトーマス・アッディス博士がいるなど家系は名門だが、ニューサムが幼い頃の1971年に両親が離婚し(当時ニューサムは3歳)、以後ニューサムと妹は母テッサに引き取られた。母親テッサは家計を支えるためウェイトレスや秘書など3つの仕事を掛け持ちし、困窮する中でも子供たちに勤勉さを教えたようだ。

幼少期、ニューサムは重度の失読症(ディスレクシア)であると診断された。5歳のときにその診断を受けたが、母親は本人に告げずにいたため、ニューサムは学生時代ずっと読み書きに大きな困難を抱えて悩んだ。文字の読み書きやスペル、数字の計算さえも困難で、学校では補習クラスやオーディオブックを活用して何とか学習についていく状態とのこと。
現在でも完全に克服できたわけではなく、公務の文章の読解や演説原稿の用意にはスタッフの助けを借りることが多い一方、人前で即興で話す能力を磨くことでハンディを補ってきた。そのような苦労もありながら、スポーツの才能に恵まれていたニューサムは学生時代スポーツに打ち込み、マリン郡のレッドウッド高校ではバスケットボール部でシューティングガード、野球部では外野手として活躍。野球の腕を評価され、卒業後はサンタクララ大学から野球の部分奨学金を得て進学した。大学では政治学を専攻し、1989年に学士号を取得した。しかし大学在学中、1年生の終わり頃に肘を故障し、プロを目指していた野球選手の道は断念した。
ちなみに、ペロシ元下院議長の関係は、ニューサムの叔母 が、ナンシー・ペロシの弟である ロン・ペロシと結婚したことで関係が出来たもの。(その後、離婚した)

政治経歴

大学卒業後、ニューサムは実業家としての道を歩み始め、1992年に家族ぐるみで親しい億万長者ゴードン・ゲティの出資を受けてサンフランシスコ市内にワインショップ「プラムジャック」を開業。彼の事業はワイナリーやレストラン、ホテルなど計23の事業体に拡大し、ニューサムは若くして成功した実業家となった。その傍ら政治にも関心を寄せ、1995年のサンフランシスコ市長選ではウィリー・ブラウン候補(元カリフォルニア州議会議長)の選挙ボランティアを務める。ブラウンが市長に当選するとニューサムは頭角を現し、1996年にサンフランシスコ市の駐車・交通委員会委員に任命された。さらに1997年、ブラウン市長によってサンフランシスコ市監督委員(市政執行委員、市議会に相当)に抜擢され、翌1998年には同職に選挙で初当選して政界入りを果たした。

サンフランシスコ市長(2004–2011年)
2003年、市長選に立候補したニューサムは企業からの資金援助や民主党主流派の支援を受け、有力候補として選挙戦を戦った。ビジネス寄りの中道的な政策を掲げたことから一部には穏健派とも評されたが、決選投票では急進的な政策を主張する対立候補を退け勝利した。
2004年1月に就任すると間もなく、全米の注目を集める大胆な行動に出た。ニューサム市長は同年2月、州法に反してサンフランシスコ市当局に 同性婚の結婚許可証を発行させたのだ 。これは州法では禁止されているが、それよりも上位の憲法で認められているとの判断だ。この決定には当初批判もあったが、最終的には2015年に米国全土で同性婚が合法化される先駆けとなり、ニューサムの判断は「正当化された」と評価が変わった。

市政では他にも伝統的にリベラルな政策を推進し、「ヘルシー・サンフランシスコ」(2006年開始)と呼ばれる全市民対象の医療制度を創設し、市民へのユニバーサルな医療アクセスを提供した。一方で経済政策では比較的中道路線を取り、企業誘致のための減税策や開発プロジェクトを支援するなどビジネス界に配慮した施策も行った。もっとも2004~2006年のホテル従業員ストライキでは労働者側を支持するなど、状況に応じて柔軟に立場を取る姿勢も見せている。ニューサムは2007年にサンフランシスコ市長に再選され、計2期務めた。

カリフォルニア州副知事(2011–2019年)
2009年、ニューサムはカリフォルニア州知事選への立候補を表明したが、資金難や支持伸び悩みから数ヶ月後に撤退した。しかし翌2010年、副知事選挙に鞍替えし、圧勝して副知事に当選した。その後2014年にも再選され、副知事職を合計8年間務めた。副知事在任中の2012年から2013年には自身の名前を冠したテレビ番組「The Gavin Newsom Show」をホストとして務め、2013年にはデジタル技術による民主主義改革を提唱する著書『Citizenville』を出版するなど、副知事職の枠に留まらない活動でも注目を浴びた。ただし、トランプ氏の人気番組の「The Apprentice」と比べれば、視聴者数などは遥かに小規模だ。

ニューサムは任期制限で引退するブラウン知事の後継を目指し州知事選に立候補した。住宅の手頃な価格化や州単一の医療保険制度(ユニバーサルヘルスケア)導入などを公約に掲げ、圧倒的な支持で当選を果たし、2019年1月、第40代カリフォルニア州知事に就任した。知事就任直後には死刑廃止論者としての立場から、州内の死刑執行にモラトリアム(一時停止措置)を宣言した。これは住民投票で支持された死刑制度に知事権限で歯止めをかけるもので物議を醸したが、ニューサムは「道義的に死刑は容認できない」として断固たる姿勢を示した。

そのすぐ後の2020年初頭、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に拡大し始めると、ニューサムは3月4日にいち早く非常事態を宣言し、全米で初めて州全域を対象にした外出禁止令を発令した。
当初この迅速な対応は評価され、多くの州民が支持した。しかしパンデミックが長期化する中で市民の疲弊も広がり、度重なる規制強化と緩和の繰り返しに不満の声も高まった。そうした中、2020年11月にニューサム知事が自ら州民に呼びかけていた外出自粛要請に反して高級レストランで大人数の会食をしていた事実が報じられ、批判が爆発した。このいわゆる「フレンチランドリーでの会食」スキャンダルを契機に、保守派を中心としたリコール(知事解職)運動が加速し、必要署名が集まったため2021年9月に知事の信任投票が実施される事態に発展。最終的に過半数の支持を得てリコールを退けたものの、政治家としてはケチがついた。
2022年11月には通常の知事選挙でも再選を果たし、現在2期目を務めている。近年は記録的な山火事や干ばつ、さらに2022年末から2023年始にかけての豪雨被害など自然災害への対応にも追われたが、2023年2月には州内のCOVID-19非常事態宣言を公式に終了させ、パンデミック対応に一区切りつけた。

信念・思想

ニューサムは一般に進歩的でリベラルな政治家と見なされている。社会的公正や弱者支援を重視する姿勢が顕著で、例えばLGBTQ+の権利保障や環境保護、医療へのアクセス拡充などに強い信念を持っている。2004年に保守的風土の残るカリフォルニアでいち早く同性婚を容認した決断や、2022年にカリフォルニア州を全米初のトランスジェンダー青年の避難州(他州で性別違和に関する医療支援を得られない未成年がカリフォルニアで保護・治療を受けられるようにする州法)に指定する法律に署名したことなどは、その象徴的な例だ。環境問題についても、気候変動への危機感から2035年までにガソリン車の新車販売を禁止する目標を掲げるなど大胆な政策を打ち出した。一方で、財政面や経済政策では現実路線を取る柔軟さも持ち合わせている。
宗教は、バイデン前大統領と同じく、カトリック教徒のようだ。

主な功績

ニューサムはこれまでのキャリアで数多くの政策的成果を挙げてきた。

  • 同性婚の先駆的承認(2004年) – サンフランシスコ市長在任中の2004年2月、州法に反して同性愛カップルへの結婚証明書発行を敢行し、後の全米における結婚の平等化への道を切り開いた。

  • ヘルシー・サンフランシスコ(2006年) – サンフランシスコ市長として、全国的にも先駆けとなる自治体レベルのユニバーサル医療制度「ヘルシー・サンフランシスコ」を創設した。

  • 気候変動対策の推進 – カリフォルニア州知事として、気候変動への取り組みでも全国をリードしました。その一例がガソリン車販売の段階的禁止で、ニューサムは2020年に「2035年までに州内で販売される新車を全てゼロエミッション車(電気自動車など)とする」目標を定めた行政命令に署名した。

  • 多様性と人権擁護のリーダーシップ – 社会の多様性尊重を推進するリーダーとしても成果を残しています。例えば2022年、ニューサムはカリフォルニア州を全米初の「トランスジェンダーの若者の避難所」州に指定する法律に署名した。この法律により、他州でトランスジェンダー医療(性別違和への医療ケア)を受けられない未成年がカリフォルニアに来て必要な支援を受けることが容易になった。このほか、カリフォルニア州における厳格な銃規制の維持、最低賃金引き上げの支持、教育無償化プログラム(カリフォルニア・カレッジ・プromise)の推進など、リベラルな価値観に基づく多岐にわたる政策を実現している。

批判・論争

ニューサムはその卓越した経歴と成果の一方で、様々な批判や論争の的にもなってきた。

  • パンデミック対応と規律違反: 新型コロナウイルス対策では全米に先駆け厳格なロックダウン措置を導入し初期対応の速さは評価されたが、長期化する規制への州民の不満も高まった。特に自らの誕生日パーティーを高級レストラン「フレンチ・ランドリー」で多数とマスクなしで行っていたことが発覚すると、「自分に甘い」と激しい批判を浴び、これが2021年の知事リコール運動に火を付ける結果となった。

  • ホームレス問題への対処: カリフォルニア州ではニューサムの在任中、ホームレス人口が5年で40%も増加し、全米の路上生活者の半数が同州に集中する事態となった。保守系論客からは「彼の統治下でテント村と都市の無秩序が至る所に拡大した」といった辛辣な批評もある。

  • 州政より野心優先との批判: 2021年のリコール選挙を含め、共和党など政敵からは「ニューサム知事はカリフォルニアの問題解決よりも将来の大統領選出馬を睨んで自己宣伝に熱心だ」との批判が根強くある。実際、2023年前後よりニューサムは全米各地で積極的にメディア出演や他州知事との論戦に臨み、フロリダ州の保守的政策を痛烈に批判するなど全国的な存在感を高めているが、その姿勢を「大統領選へのパフォーマンス」と見る向きもあった。

  • 進歩派からの不満: リベラルな支持者層からは「ニューサムは見かけほど革新的ではない」との声もある。例えばシングルペイヤー医療制度の実現を巡って、公約していたにもかかわらず実行に移そうとしなかったことに対し失望が示されている。また近年、治安対策や薬物中毒者支援をめぐる法案に拒否権を行使する場面もあり、「左派的理想より実利を選んだ」との指摘も受けている。

  • 私生活上のスキャンダル: 政治手腕以外の面では、私生活のスキャンダルも取り沙汰されました。最も有名なのは2005年に当時自身の部下であった女性(市長時代の秘書で、ニューサムの選挙キャンペーン責任者の妻)との不倫関係が明るみに出た件だ。この不倫は2007年に報道され、ニューサムは記者会見で「私的な判断の誤りであり深く後悔している」と公に謝罪した。なお、ニューサムは2006年に最初の妻キンバリー・ガイルフォイル(元サンフランシスコ市検事局員、現保守系TVコメンテーター)と離婚し、2008年に女優のジェニファー・シーベルと再婚、現在までに4人の子供がいる。

将来の米大統領候補としての評価

ニューサムはその卓越した政治経験と全国的な知名度から、将来の合衆国大統領候補の一人として頻繁に名前が挙がる。事実、カリフォルニア州知事としての2期目が2026年で終了し、任期制限により2027年には州知事職を離れるため、2028年米大統領選への出馬が広く期待されているのが現状だ。一方でニューサム陣営は公式には野心を否定しており、2025年前後に行った南部州歴訪や他州支援は「2026年の中間選挙に向けた民主党支援のため」と説明している。

ニューサムが全国的な脚光を浴びるきっかけの一つとなったのは、トランプ大統領や共和党保守派との対決姿勢だ。彼は自ら進んでテレビ討論やSNS上でトランプ氏やフロリダ州のデサンティス知事らを批判・論破し、連邦政治におけるリベラルの代弁者として頭角を現した。例えば2023年には自身のポッドキャスト上で、テキサス州が共和党有利に選挙区を引き直したことへの対抗措置としてカリフォルニアでも民主党有利な区割り変更を提案し物議を醸したが、こうした「闘う民主党員」の姿勢はトランプ時代の到来に不安を覚える民主党支持者層から熱狂的な支持を集めている。実際、サウスカロライナ州民主党の幹部は「いま人々が求めているのは恐れ知らずで戦う闘士だ」として、ニューサムのファイティングスピリットを称賛している。

もっとも、ニューサムが大統領選に挑む上で課題がないわけではない。最大の懸念材料として指摘されるのが「カリフォルニアの重荷(California burden)」だ。カリフォルニア州は全米で最もリベラルで規模の大きい州である反面、他州の保守層からはしばしば「増税と規制過多で人や企業が流出する失敗モデル」「ホームレスと犯罪が蔓延するカリフォルニアの現状を見よ」と批判の的にされる。ニューサムが大統領選に出馬すれば、対立陣営である共和党は州知事としての彼の実績(特にホームレス問題や生活費高騰、犯罪率などの課題)を攻撃材料に使うと予想される。また有権者の中には「カリフォルニアの価値観(リベラルすぎる政策)は全国区では受け入れられにくいのではないか」という声もある。さらに、人柄や資質の面では、ニューサムは幼少期からの失読症ゆえに長文の読み書きが不得手でスピーチにも独特の癖があるため、過酷な全国キャンペーンで弱点とならないか懸念する向きもあるようだ。

しかしながら、カリフォルニア州知事として培った行政手腕や全米有数の巨大州を率いた経験、そして何よりそのカリスマ性と発信力は、ニューサムを将来の有力な大統領候補たらしめるに十分なものがある。事実、2024年大統領選では出馬こそしなかったものの、各種世論調査で民主党支持者の間で高い支持を集めるなど、その人気の高さが示された。民主党予備選においても、しばしばリベラルな草の根活動家から中道派まで幅広い支持を得られる人物と評価される。総じてニューサムは、「トランプ時代」に対抗し得る戦うリベラルの旗手として、そしてカリフォルニアでの成果と教訓を背負って全国舞台に躍り出る可能性を秘めた政治家だと言えるだろう。2028年の大統領選挙において、彼がその潜在力を如何なく発揮できるか注目が集まっている。

支持基盤と人脈

ニューサムの政治的な支持基盤には強力なものがある。まず潤沢な資金力の面では、シリコンバレーのテック業界から絶大な支持を受けており、GoogleやMeta、Salesforceの経営陣などIT長者からの献金が選挙戦を支えている。ハリウッドの映画界からも人気が高く、俳優のジョージ・クルーニーや映画監督のロブ・ライナーなど名立たる業界人がニューサムを公然と支援していいる。組織面では全米最大規模の労働組合SEIU(サービス従業員国際組合)や教員組合など多数のユニオンがニューサムを強力にバックアップしており、草の根の集票・動員力で他候補を凌駕する。
さらに民主党内のネットワークでは、義理の叔母にあたるナンシー・ペロシ元下院議長をはじめカリフォルニア選出の連邦議員団や大口献金者グループとの太いパイプがある。ペロシ家とは遠戚関係にあることも相まって、ニューサムは民主党随一の資金調達力を誇るカリフォルニア・マシンの全面的支援を受けられる立場にある。要するにニューサムは「資金・メディア・組織動員力」のすべてを兼ね備えた政治家であり、これは全国政界で戦う上で大きなアドバンテージとなるだろう。

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