ループ #誰かの役に立てたこと
どうぞ。
気付かなくてごめんなさい。座って下さい。
子供が立ってたら危ないからね。
ベビーカーって乗せにくいですよね。
上まで持ちます。
その立場になって、初めてわかることがある。
妊娠していたとき、比較的安定していたというか、むしろ歩いたり運動を勧められていた私は、時々電車やバスの公共交通機関を使っていた。
マタニティマークを一応つけて。
マタニティマークをご存知の方、多くなってきたと思う。

カバンにつけたキーチェーン。
私はお恥ずかしながら、毎日電車を利用していたとき、ほとんど気付いたことがない。
長い通勤時間だった頃には、座れたら睡眠時間の続きであり、泥のように座席に沈み込み、周りを見る余裕もなかった。
ところが、自分がそのマークのお世話になると、見える。認識し出したといった方が正しいか。
結構、マークをつけている方がいらっしゃる。
マタニティマークもヘルプマークも、席を譲ることを強いているわけではない。
つけている方も、逆に気を遣われなくても大丈夫なときは、ドアから外を眺めていたりする。
“Baby in Car” の表示のように、何か起きてしまったとき、そんなことなければいいが、もしも遭ってしまったときの無言の伝達事項のつもりでいた。
もちろん、それを旗印にしていると考える人とも争わなくていいように。
ところが、妊娠期からたくさんの優しい声を聞いた。小さな命が見える方々。
こんなにすぐに気付くのかと驚くほどに。
今日は大丈夫そうだと、わざと眠っていた事務員さんのような制服を着た方の前に立っていたときも。
目を覚まし顔をあげたと思ったら、パッと席を譲ろうとしてくれた。
「大丈夫です。私は大丈夫ですから。」
慌てて辞退しようとしたが、いえいえと。
大きな昆虫のようなサングラスをかけた強面なお兄さんの前に、たまたま立ったときも。
あっという間に、どうぞと言って去って行った。
止める間もなく。
それは、子供が小さい頃まで続いた。
危険が現実になる前に、貸してくれる手。
子供は電車や特に曲がり角が急なバスで、立っているのが思ったより難しいと知っているご年配の方。
ベビーカーの前輪辺りを持ち上げて、ドア近辺で手伝ってくれた女性。
こんなにスッと、たくさんの経験からの、そして想像からの親切な心が、世の中にはあるんだと、本当に感動した。
知らなかった世界を知る。
知っている方から、教えてもらう。
電車は寝るもんだと思っていた私は、お礼を言うしかできなかったけど。
私の子供は、その時期を過ぎた。
だから、今度は。
私は、周りをクルッと見回す。
いた。マタニティマークの方。小さいお子さんがぐずってしまっている方。
「どうぞ、座ってください。」
おせっかいおばさんなんて、思わないで。
かまえないで。後から辛くなるときもあるから、ね。
今度はお返ししたくて、たまらない。
私が大変なときに、いただいた嬉しさを。
小さな命を育む、あなたにも。
