「生成AIだから大丈夫」が、一番危ないかもしれない。
今回は、実際に私が業務で関わっている案件で起きたトラブルについて、少し書いてみようと思います。
守秘義務などの関係もあるので、具体的な会社名や細かい経緯は伏せますが、
「権利関係って、思っている以上に簡単ではないな」
と、改めて感じさせられる出来事でした。
きっかけは生成AI
ある会社A社が、提供を受けた写真素材などを生成AIに読み込ませ、広報物の案を作成しました。
ここまでは、最近では珍しい話ではありません。
ところが、その広報物の案を、今度は写真の提供元であるB社が生成AIに取り込み、さらに別の案を作成。
そして、その生成物をB社のホームページで使用したことで、問題が発生しました。
ちなみに私は、B社から業務委託を受けて撮影を担当していた立場です。
この経緯を知ったときの私の感想は、
「……え?
両方とも、著作権のことどう考えてるんだ……?」
でした。
「AIに入れたら別の作品」ではない
生成AIを使っていると、
「元の写真とは違う画像になったから大丈夫」
「AIが生成したものだから、自分が作った著作物ではない」
「元画像をそのまま使っていないから問題ない」
と考えてしまうことがあります。
でも、実際にはそんなに単純ではありません。
写真について言えば、撮影者が創作性をもって撮影した写真には、著作権が発生します。
つまり、
「ネットにあった」
「取引先から提供された」
「自分が持っているデータだった」
ということと、
「自由に生成AIへ入力していい」
ということは、別の話です。
ここは、クリエイターだけではなく、企業の広報担当者やデザイナーなど、AIを仕事で使う人ほど注意したほうがいい部分だと思います。
そして、もう一つ見落としやすい権利
今回、さらに難しいのが「写真そのもの」だけの問題ではないことです。
撮影した写真にモデルさんが写っている場合、当然ながらモデルさん自身にも肖像に関する権利があります。
つまり、
写真の著作権
+
モデルさんの肖像に関する権利
という、複数の権利を考えなければなりません。
「撮影者から写真をもらったから使える」
だけではなく、
「その写真をどこまで利用していいのか」
「AIに入力して加工・生成していいのか」
「生成したものを広告やWebサイトで使っていいのか」
まで確認する必要があります。
権利問題は「使った瞬間」より「使う前」が大切
今回の件については、現在、一旦事務所にも状況を報告し、今後の対応について関係者間で検討しています。
正直なところ、長い戦いになりそうです。
そして、こういうトラブルを経験すると改めて思います。
権利問題は、問題が起きてから調べるのではなく、使う前に確認するのが一番ラクです。
生成AIに限った話ではありません。
写真、イラスト、音楽、動画、フォント、文章、キャラクター……。
「誰かからもらった」
「ネットで見つけた」
「仕事で使うために提供された」
それだけでは、
「好きなように加工・転載・二次利用していい」
という意味にはなりません。
「知らなかった」では済まないことがある
今回の件を通して、私自身も改めて気を引き締めたいと思いました。
生成AIは非常に便利です。
制作の効率を上げてくれますし、アイデアを広げる道具としても優秀です。
だからこそ、
「便利だから、とりあえず入れてみる」
ではなく、
「この素材をAIに入力していいのか?」
「生成したものを商用利用していいのか?」
「元になった作品の権利者から許可を得ているのか?」
「写っている人物の利用範囲は大丈夫なのか?」
と、一度立ち止まることが大切だと思います。
そしてこれは、生成AIを使う人だけの話ではありません。
仕事を依頼する側も、受ける側も、素材を提供する側も。
それぞれが「自分には何が許されているのか」を確認しておく必要があります。
便利な時代だからこそ、権利について考える
生成AIそのものを否定するつもりはありません。
むしろ、これからのクリエイティブ業界では、AIを上手に活用していくことが当たり前になっていくでしょう。
だからこそ、
「AIだから大丈夫」ではなく、
「AIだからこそ、素材の権利関係を確認する」
という意識が必要なのだと思います。
今回の件がどう決着するのかは、まだ分かりません。
ただ、一つ確実に言えるのは、
権利というものは、便利な道具を使ったからといって消えてなくなるものではない。
ということ。
「これくらい大丈夫だろう」
という小さな判断が、後になって大きな問題になることがあります。
私自身も今回の件を教訓にして、これからも制作に関わっていきたいと思います。
そして、この記事を読んでくださった方にも、
「生成AI、便利だからこそ、権利関係だけは安易に考えないようにしよう」
と、少しでも思っていただければ幸いです。
