私が森保監督のインタビューを見る理由
サッカーの試合がある日もない日も、テレビで森保監督のインタビューがあると、ついつい見入ってしまう。
決して、派手な言葉やパフォーマンスがあるわけではない。
選手とのコミュニケーションの取り方や、インタビューの言葉の選び方に惹かれるのだ。
スポーツの監督というと、厳しく指導する人を思い浮かべる。
でも、私が注目したのは質問に対して「おっしゃるとおりです」と笑顔で相槌を打ち、番組によっては海外ではDEATH NOTE(デスノート)と恐れられている「森保ノート」を手に出演しているところだった。

特にハッとしたのは、開幕前の特集番組の冒頭。
試合を終えてそれぞれのチームに帰る選手ひとりひとりを、笑顔で見送っている。
しかも、早朝4時。
他の監督は、どんなふうに接しているかはわからない。
森保監督は、日頃から選手をよく見守っていると感じた。
練習を最後まで見守り、選手によって言葉を変えているところが印象的だった。
また、メンバーの見えない努力をとてもよく見ていて、モチベーションが上がるという選手のインタビューを聞いた。

他の番組では、森保監督が自覚している強みは「柔軟性」だとおっしゃっていた。
具体的には、違う価値観を受け入れるということだ。
変にしばってまとめようとしない姿を見ているうちに、「森保監督はどんな選手時代を送ってきたんだろう」と興味を持ち、『逆転監督 森保一』という本を手に取った。
ところが、本を開いて驚いた。
学生時代は、真面目なイメージとは正反対。
とてもやんちゃだったらしい。
当時の髪型は、金髪やパンチパーマ。
中学にサッカー部はなく、高校は強豪校ではなく中堅校だった。
社会人になって名門クラブに入ってからも、長く無名選手だったそうだ。
体格も才能も「普通」。
それでも、がむしゃらに努力を積み上げてきた。
その歩みは、テレビの画面で見る穏やかな印象からは、まったく想像できないほど、波乱に満ちていた。

人を「見る」、話を「聞く」
「速くない、うまくない、強くない」
そんな選手が、なぜ才能を開花させたのか。
ひとつだけ、わかりやすい特徴があった。
日本人はボールを持つとみんな下を向くのに、上を向いてキョロキョロしていたらしい。
土のグラウンドでボールを扱うのは難しいのに、顔を上げていたのだ。
そして当時は、目上の人の話を聞くときに下を向くほうが礼儀正しいと思われていたのに、相手の目を食いるように見つめていたという。
さらに、とても素直。
人から吸収して、コツコツと積み上げる天才だったそうだ。
のちに、「人から話を聞いて吸収する力」は日本代表監督として生かされている。
2022年9月のドイツ遠征で、ベテラン選手からの「大まかな方向性だけでなく、より細かい指示も出してほしい」という相談があった。
森保監督は、提案を受け入れた。
その日を境に、選手たちが「こうしたらいいのではないか?」と意見を伝えやすい雰囲気が生まれたそうだ。
試合中に、選手同士がきめ細かくコミュニケーションを取っている姿に納得した。

万が一ダメだったとしても、前向きに倒れればいい
森保監督は17年間の現役生活を終えるときに、戦力外通告を新幹線のデッキで告げられた。
大きなショックを受けただろう。
それでも森保監督は、
「チームがよくなり、明るい未来が訪れることを祈っています」
目をじっと見つめ、答えたという。
職を失った悔しさではなく、真っ先にチームの未来を祈る姿勢に心を打たれた。
今まで逆境を乗り越えてきた人の話をたくさん聞いてきたが、森保監督の逆境との向き合い方には説得力があった。
特に二つの言葉が心に残った。
「『ここを乗り越えれば、また新しい自分に会える。またひとつ成長できる』そう思うからこそ逆境がストレスにならない」
「万が一ダメだったとしても、前向きに倒れればいい」

私はスポーツ選手でもないし、リーダーでもない。
それでも、仕事や学びで壁にぶつかったときに「森保監督だったらどう考えるだろう」と、一呼吸置いてみたいと思う。
人をよく見て、話をよく聞く。
挑戦するのが怖いとか、何をやってもうまくいかない日は「前向きに倒れればいい」。
まずは、人の話を聞いたら「おっしゃる通りです」と相槌を打つことから始めてみよう。
きっとこれからも、テレビで森保監督のインタビューが流れてきたら、見入る日が続きそうだ。
今度は、手元にそっとノートを開いて。
参考:木崎伸也|逆転監督 森保一|(文藝春秋・2026年5月28日発行)
#ワールドカップ
#サッカー
#森保一
#森保ジャパン
#サッカー日本代表
#読書感想文
#逆転監督 森保一
