炎(かぎろひ)
【記録◆2023年12月6日】②
『東の野に炎の立つ見えて 反り見すれば月傾きぬ』
(ひむがしの野にかぎろひの立つ見えて かへり見すれば月かたぶきぬ)
という柿本人麻呂の歌は、「たたなづく青垣」に囲まれた地から果てもない宇宙を詠っているようです。見えないから視えるのかもしれません。
桜井市の鳥見山(標高245m)から東へ向かい、先週に居た鳥見山(標高734m)で眺めた風景のなかへ入っていきました。
宇陀市の『かぎろひの丘』は、山中にあるため、桜井市の鳥見山山頂より標高は130m以上高くなります。
二本杖で辿り着いた所より280mほど高いので、「かなり寒いだろう」と覚悟していたのに、真昼の陽に包まれた丘は暖かく感じられました。風が、吹くのを止めてくれたから。
柿本人麻呂が詠った『炎(かぎろひ)』は、よく晴れた厳冬の夜明け前、下の写真の空に現れるそうです。

中央に見えているのは、県境にある『高見山』。
背中側には樹が多く、東方に射す光は見えても、西の空に沈んでいく月は判らないかもしれません。でも、柿本人麻呂の視線の先には在ったのです。

上の写真は、「大和富士」とも呼ばれる『額井岳』。先週には、鳥見山の「見晴台」のすぐ隣にあるような感じがしました。
宇陀市の鳥見山から眺めた光景は、以下の記事にあります。このときには桜井市の鳥見山へ行く予定は無かったのでした。

この丘のすぐ隣にあるような感じがするのは『西山岳』。

丘を下った所に、柿本人麻呂の騎馬像が立っています。
このあたりは宮中行事でもあった「薬狩り」が行われた阿騎野なのです。
薬草を摘んでいる女性たちの間をわたしは歩いているのでしょう。
1300年以上の時間の隔たりがなければ。
柿本人麻呂が文字にたきこめた時間はさらに長いと知られてきました。
それは、『天地(あめつち)初めて発(ひら)けし時』からの時間で、「炎(かぎろひ)」のように夜明け前の暗い空を彩りはじめています。
