AI自動化で生まれた時間の正しい使い方
月72時間の工数削減。
年間864時間。
数字は立派です。
でも、本当に大事なのは「その時間を何に使ったか」です。
実は、AI自動化で時間が浮いても、その時間を別の事務作業で埋めてしまう院長が少なくありません。
Dental AI Academyの受講者からも「時間は浮いたはずなのに、なぜか忙しさが変わらない」という声を聞きます。
時間が浮いた後に何をするかを意図的にデザインしないと、空いた時間は無意識のうちに「雑務」で埋まってしまいます。
今回は「浮いた時間の正しい使い方」を書きます。
なぜ「浮いた時間」が消えるのか
心理学にパーキンソンの法則というものがあります。
「仕事は、利用可能な時間をすべて満たすまで膨張する」。
つまり、時間が空くと、その時間を埋める仕事が自然に発生する。
あるいは、既存の仕事が必要以上に時間をかけて行われるようになる。
具体的には、こういうことが起きます。
EPARKの自動処理で毎朝50分が浮いた。
その50分、何をしているか。
メールをもう少し丁寧にチェックするようになった。
スタッフと雑談する時間が増えた。
以前は見なかった業界ニュースサイトを読むようになった。
どれも悪いことではないけれど、経営的にインパクトのある活動ではない。
浮いた時間を意味のある活動に使うには、「何に使うか」を事前に決めておく必要があります。
第2領域への時間投資 ― 7つの習慣のフレームワーク
スティーブン・コヴィーの「7つの習慣」に、時間管理のマトリクスがあります。
第1領域(緊急かつ重要):急患対応、スタッフの急病、機器の故障、締切間近の書類。
避けられない。即対応が必要。
第2領域(緊急ではないが重要):新しい治療技術の習得、スタッフの育成計画、中長期の経営戦略、患者満足度の向上施策、学会発表の準備、新規事業の構想。やらなくても今日は困らない。でもやらないと1年後に大きな差がつく。
第3領域(緊急だが重要ではない):定型的なメール返信、電話対応、データ入力、レポート作成。日常のルーティン。
第4領域(緊急でも重要でもない):目的のないSNS閲覧、惰性の会議、必要以上に丁寧な書類作成。
AI自動化は、主に第3領域の作業を削減します。
EPARK予約処理、データ入力、レポート作成。
これらが自動化されることで、第2領域に使える時間が生まれます。
問題は、第3領域から解放された時間が、第4領域に流れやすいことです。
「時間ができたからSNSでも見よう」。
これでは意味がない。
浮いた時間を第2領域に「意図的に投資する」設計が必要です。
僕の「浮いた時間」の使い方 ― 週次タイムブロック
僕は浮いた時間の使い方を「週次タイムブロック」で管理しています。
毎週月曜の朝、その週の「第2領域タイム」をGoogleカレンダーに予約する。
診療予約と同じように、時間枠を確保する。
現在の週次タイムブロック配分はこうです。
OralEnglish Orthoの教材開発と海外展開準備:週10時間(火曜と木曜の午前)。スポーツ歯科の研究と学会発表準備:週5時間(水曜の午後)。
スタッフとの1on1面談:週3時間(月曜と金曜の夕方、各院1名ずつ)。
noteの記事執筆:週2時間(日曜の朝)。
新しい自動化のアイデア出しとプロトタイプ:週3時間(土曜の午前)。
経営戦略の思考時間:週2時間(金曜の朝、1人で静かに考える時間)。
合計週25時間。
これがすべて「第2領域」の活動です。
AI導入前は、第2領域に使える時間はほぼゼロでした。
月に数時間がいいところ。それが週25時間になった。
この差が、OralEnglish Orthoの海外展開、Dental AI Academyの事業成長、noteを通じた業界への影響力という成果につながっています。
「考える時間」を最優先にする理由
週次タイムブロックの中で、僕が最も大切にしているのは金曜朝の2時間「経営戦略の思考時間」です。
PCも閉じる。
スマホもサイレントにする。
白い紙とペンだけを持って、1人で静かに考える。
「5年後のなないろ歯科はどうなっているべきか」「今のリソース配分は最適か」「見落としているリスクはないか」「次にやるべき大きな意思決定は何か」。
こうした問いを、時間をかけて考える。
院長が「考える時間」を持てない医院は、戦術は走っていても戦略が不在になります。
日々のオペレーションはAIが回してくれる。
だからこそ、院長は「何のためにオペレーションを回しているのか」を考える時間を持つべきです。
AI自動化の真の価値は、削減された工数でも、節約された人件費でもありません。
院長に「考える時間」を返すこと。
そしてその時間で考えたことが、医院の未来を形作る。
これがAI自動化の最終的な存在意義です。
あなたの「第2領域」は何ですか
僕にとってはOralEnglish Orthoの世界展開とスポーツ歯科の研究が第2領域の中心でした。
あなたにとっての第2領域は何ですか?
新しい治療技術の習得かもしれない。
スタッフ教育の充実かもしれない。
分院展開の計画かもしれない。
地域医療への貢献かもしれない。
学会発表かもしれない。
あるいは、家族と過ごす時間かもしれない。
AI自動化は手段です。
目的は「あなたがやりたいことに時間を使えるようになること」。
浮いた時間を何に使うかを決めるのは、AIではなく、あなた自身です。
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白崎俊|歯科医院のAI自動化
医療法人なないろ歯科・こども矯正歯科クリニック 理事長
Dental AI Academy 主宰
