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【実験的ショートショート デビュー作】 裏庭に死神が出た!

《本作は、前回の記事「一般人にもショートショートはホントに書けるのか?」で決定した「お題」に基づき、一般人である私が実験的に書いてみた小説です》

(お題:「食中毒死神」)


今朝、村の外れに住む偉い「先生」が突然死んだ。

先生もほかの村人たちも、お互いに付き合いを避けていたので、誰もこの先生の名前を知らなかった。

どうやら長きにわたって「弁護士」をしていたらしく、その鼻持ちならない性格を揶揄する意味も込めて、いつしか村人はこの元弁護士を陰で「先生」とか「あのお偉い先生」とか呼ぶようになった。

噂によると、優秀な弁護士であったらしく、黒を白に、ときには白を黒にしたりと、悪どい「でっち上げ」が得意だったとか。

十分な財産を築いた先生は、仕事も引退し、この辺鄙な場所にある村に家を買って、気ままに「世捨て人」のような生活を送っている、、、というのも村人たちの噂であった。

そんなお偉くて鼻持ちならない先生が突然死んだのだ。
ほんの1カ月前は、あんなに元気そうだったのに。。。

1カ月前

先生は、今日も村人たちに対して、とても不機嫌だった。

「あいつらはホントにバカ者どもの集まりだ。その上、民度が低い。私の裏庭に、あんな頭の悪い奴らが出入りするのは全くけしからん」

「裏庭」というのが、先生のお気に入りの場所である。

別に先生の私有地でもなく、先生の家からちょっと歩いたところにある「雑草も茂り放題」のだだっ広い空き地に過ぎない。

ただ、その後ろには緑いっぱいの山がそびえ立ち、少し歩くと海も見えるという、何とも景観良い場所なのだ。

先生が越して来る前から、村人たちの憩いの場となっており、休みの日には家族がピクニックに来たり、子供たちの遊び場となったりしていた。

それを先生が勝手に「私の裏庭」と呼んでいるだけの話である。

そんなことは、お偉い先生にはお構いなしで、「あんな素晴らしい裏庭は、私のような頭の良い人間が1人占めするにふさわしい。何とか、頭の悪い奴らが来ないようにしなくては」とあれこれ考えている。

ある日、「でっち上げ」の得意な先生は、嘘八百の立て看板を設置することにした。

「よし、頭の良い私が、頭の悪いあいつらに道徳というものを教えてやろう」

立て看板には、こう書いた。

「この裏庭は私の家であり、勝手に入るのは人間として誠に恥ずべき行為である。言わば、盗人があなた達の家に勝手に入って冷蔵庫の中のビールでも飲んでいるようなものである。今後、恥ずべき行為はやめ、真っ当な人間として生きていかれることを強く求む!」

「頭の悪いあいつらめ。全く教養がないというのは恐ろしいことだ」と看板の出来にご満悦の先生。

立て看板を設置しようと裏庭に行くと、1人の女の子が傍らにバスケットなどを置き、草むらで遊んでいた。

ご立腹の先生は、女の子に対して言った。

私の家で何をしている?親にディズニーランドにでも連れてってもらうか、家で友達とソシャゲでもしていなさい」

女の子はニタニタ笑って「おじさん、こんにちは。私はミナちゃん。5さいです。お母さんは遠い星に行ったって、お父さんは言ってます。人間のお友達はいないので、こうして動物さんや虫さんのお友達と遊んでるの」と答えた。

先生は 「頭の悪い子だ。自分に『ちゃん』を付けるんじゃない。そして、おじさんじゃなく、先生と呼びなさい」と言って、ミナを軽蔑するような目で見た。

ミナは 「うん、わかった。先生!みんなも、このおじさんを先生と呼ぶんだよ!」と周りのバスケットやら瓶やらに話しかけた。

先生が良く見ると、バスケットには犬が、瓶には虫が入っていて、どうやらミナの言う「お友達」らしい。

「私は犬が大嫌いだ。それに何だ、その小汚い瓶は!虫けらなんか持ち込んで。さっさと出て行け!」と怒る先生。

ミナは素直に「はぁーい。先生またねー」と言って、その場からいなくなった。

その日から暫くして、先生は裏庭に様子を見に行った。
立て看板の効果があったのか、村人たちは誰もいないようであった。

先生もご満悦だったが、さらに暫く経つと、また村人たちは裏庭に遊びに来るようになった。

「やっぱりあいつらはバカ者どもだ。時間が経つと、すぐに忘れる」と先生は怒りだした。

「でっち上げ」の得意な先生、またもや嘘八百の立て看板を設置することにした。

「頭の悪いあいつらを法律面から教育し、脱法行為の怖さというものを教えてやろう」

立て看板には、こう書いた。

「あなた達は未だに不法侵入を続けているようである。これは法律に背く行為である。言わば、強盗があなた達の家に入って、ビールの入った冷蔵庫ごと脅し取っていくようなものである。今後、私の家である裏庭に入った場合、然るべく法的手続に着手し、あなた達の家も没収する!」

先生は「頭の悪いあいつらは、法律なんて言葉を出されて、きっと恐れ慄くだろう。全く法律というものは、悪用するに限る」とニヤリとした。

立て看板を設置しようと裏庭に行くと、またもやミナが1人で遊んでいた。

先生は「またお前か?ここは私の家だと言った筈だ。また犬っころや小汚い虫けらなどを持ち込んで、全くけしからん。今すぐ出て行け」とミナを蔑むように見た。

ミナはまたニタニタ笑い、「あっ、先生久しぶり!みんなも先生に挨拶するんだよ。こっちの犬ちゃんはジョンちゃん、こっちの虫ちゃんはタマちゃんっていうの」とバスケットやら瓶やらを差し出した。

「もうジョンでもタマでもチョビヒゲでもいい。さっさと出て行け!」と一喝する先生。

ミナは「はぁーい。先生またねー」と言って、その場からいなくなった。

それから暫くして、先生は裏庭に様子を見に行ったが、村人たちは誰もいないようであった。

「頭の悪いあいつらも、法律はさすがに怖いと見える。頭の良い私が法律を悪用し、邪魔者どもを排除することができたぞ」とご満悦な様子の先生。

しかし、さらに暫く経つと、またも村人たちは裏庭に遊びに来るようになった。

先生は、いよいよ頭に来た。

「頭の良い私だが、あいつらに難しいことを言ってもムダだ。私のキャラではないが、頭の悪いあいつらのレベルに合わせた幼稚で単純な脅し文句にしてやろう!」と考えた。

立て看板には、こう書いた。

「あなた達の度重なる行為に、ついに神はお怒りになった。もはや、あなた達のお相手には「死神」がお似合いである。今後、この裏庭に侵入した者には「死神」が取り憑き、その者はもがき苦しんだ挙句、壮絶な最期を遂げるであろう!、、、分かりやすく言うと『入ると死ぬぞ!』」

「結局、あいつらには、この程度の幼稚な脅し文句が一番効くだろう」とご満悦の先生。

所詮はすべて「でっち上げ」であり、「死神」などいる筈もないのは先生が一番良く分かっている。

先生はニヤニヤしながら「これで死神にビビった村人も近寄らず、心置きなく裏庭を1人占めすることができる」と独り言ちた。

それから暫くの間、先生は裏庭の様子を注意深く見守った。
今回ばかりは「死神」の話を気味悪がったのか、村人たちは一向に裏庭に現れる様子もない。

きっと、親たちも子供に対し、裏庭に近付かぬよう言い聞かせているのであろう。

さらに1週間ほども経ち、誰も寄り付かなくなった裏庭を見て、「ああ、やっと私だけの裏庭になった!」と先生は満足な様子で、裏庭に足を踏み入れた。

満足気に裏庭を闊歩していた先生だったが、ほどなくして、急にひどくもがき苦しみ始めたように見えた後、ドサっ!と倒れ込み、村人たちからも、この世のすべての煩わしさからも「永久に」解放されることとなった。。。

これが、冒頭の「今朝」のできごとである。

ほんの1日前は、あんなに元気そうだったのに。。。

先生の最期は、あたかも先生自らがでっち上げた「死神」に、その命を奪われたようにも見えた。。。

1日前

先生が死ぬ1日前の日曜日、時刻は夕方である。

「近所のお兄さん」がミナの家に遊びに来て、「ミナのお父さん」と話し込んでいた。

「それにしても、君も都会の大学まで出たのに、またこの辺鄙な村に戻って来るとはホントに物好きだね」とミナのお父さんが言う。

「いえ、僕が勉強したのは生物学ですから、やっぱり自然や動物に囲まれる生活ってのはいいもんですよ」と近所のお兄さんも楽しそうに話す。

そのとき、お兄さんが部屋の片隅に置かれた瓶に気が付いた。
「やや、おじさま。この瓶は何ですか?」

ミナのお父さんは「おっ、このところ仕事が忙しくて気付かなかった。またミナが近所で虫でも捕まえて、瓶に集めているんだろう」と答えた。

そして、ミナが「うん、これはコロちゃん。私の大事なお友達。海の近くで見付けたばっかり。後でエサあげなくちゃ」と言った。

お兄さんは、真剣な顔で「海の近くかぁ。瓶ごと見付けたんだね」と独り言のように呟いた後、ミナのお父さんに向き直った。

「う~む。おじさま、この瓶の中にいるのは見た目は綺麗ですが、、、これは毒グモですぞ。。。しかも、ここいら辺には生息しない猛毒を有するやつです。どこぞの研究員が研究材料としていたか、または物好きがペットとして持ち歩いていて、きっと船着き場に忘れていったのでしょう」

ミナのお父さんは青くなり、「毒グモ?猛毒?いったいどうすりゃいいんだい?」と言った。

お兄さんは「まだ餌はあげてないですね?でも、瓶が割れて逃げ出したらたいへんだ。ここいら辺では、解毒剤も手に入らない。こんな田舎で飼うのはやっぱりムリです。早急に保健所に頼んで駆除してもらいましょう!」ときっぱり言った。

ミナもただ事ではない雰囲気を察したのか、「えつ、コロちゃんどうなっちゃうの?もう私の大事な友達だよ!家族だよ!遠くに行ったらやだよ!」といつものニタニタが消えて、泣きそうな表情になった。

お兄さんは(かわいそうだが、多少怖がらせないと、ミナちゃんに納得してもらえそうにないな、、、)と思ってこう言った。

「ミナちゃん、残念だけど、コロちゃんは人間にとって怖い虫さんなの。もし人を噛んじゃったら、その人はガクガクブルブル震えて、血とか汗とか涙とかオシッコとかが止まらなくなって、ゲーゲー吐いた後、心臓も息も止まって泣きながら死んじゃうんだよ」と言った。

困ったように自分を見るミナに対し、お父さんは静かにこう言った。

「ミナ、仕方がない。今日の夜、コロちゃんにお別れの挨拶をしなさい。明日、コロちゃんは、お母さんと同じ遠い星に行っちゃうんだよ」とだけ言った。

ミナは黙って、その目に涙を溜めるだけであった。

その日の夜、ミナはこっそりと家を抜け出し、瓶に入ったコロちゃんと最後の散歩をしていた。

「コロちゃん、私のお母さんみたいに遠くに行っちゃうんだね。せっかくお友達になれたのに寂しいよ」とミナは瓶に話しかけ、あの「裏庭」の近くに差し掛かった。

すると、ちょうど裏庭の様子を見に来た例の「先生」がミナに気付き、「夜に子供が何を1人で出歩いている?この裏庭は私の家だが、「死神」が出るから、大人も近付かないんだぞ。さっさと家に戻りなさい」と言い放った。

ミナは「そのシニガミのおじさんが出てくると、どうなっちゃうの?」と先生に聞いた。

先生は、ミナが二度と裏庭に近付かないよう少し怖がらせてやろうと思い、こう言った。

「裏庭に入った人には死神が憑り付くんだ。そして、その人はガクガクブルブル震えて、血とか汗とか涙とかオシッコとかが止まらなくなって、ゲーゲー吐いた後、心臓も息も止まって泣きながら死ぬことになる

ミナは 「先生は、裏庭に入って大丈夫なの?」と聞いた。

痛いところを突かれた先生だが、良い反論も思い浮かばず、イライラしてこう言い放った。

私はこの村で一番頭の良い人間だ!死神とも友達なんだ!普通の人はガクガクブルブル震えて死ぬが、私は頭が良いので、色々できる!とにかく私は大丈夫だ!頭の悪い子供には分かんないことだ!」

そして、プリプリ怒って、そのままどこかに行ってしまった。

、、、ミナは瓶を見下ろし、「コロちゃん、たぶん明日になったら怖いところに連れて行かれちゃうよ。でも、あの先生なら、シニガミのおじさんが来ても大丈夫って言ってるから、きっとコロちゃんのことも可愛がってくれるよ!」と呟いた。

そして、「これからは、このままだとたいへんだよね。コロちゃん、会えて楽しかったよ。お父さんに言われたから、もう私は会いに来れないけど、先生と一緒に元気でね!」と言って、無邪気に瓶の蓋を開け、コロちゃんを裏庭に逃がした。。。

(完)


~あとがきに代えて~

ショートショートにしては、ながっ。。。
しかも「食中毒」じゃなくて、単なる「毒」になって「お題ずれ」した!

【実験結果】
「一般人でも~書けるのか?」については、皆さん「書きながら、書けるようになっていっている」のかと感じた。

無計画にストーリーをドバッと書いてしまうと、大幅に削るのは難しいことも分かった。。。
短くスパッとオチまで楽しませる方々というのは、発想のセンスみたいのもあるであろうが、努力して練習量もこなしているのだろうという気もした。

あと「お題でショートショート」の場合、「お題」は守った方がいいと思う(そりゃ、そうだ)

まあ初めてなので、、、、という言い訳も交えつつ、取り合えず「やってみた」(大汗)

※ 慣れている方、同じお題「食中毒死神」で500文字ぐらいで別のサンプル作品つくっていただければありがたいです。

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