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dardar
『駅で迷子になった金曜日』
『駅で迷子になった金曜日』
金曜日が見つかったのは、朝の駅だった。
改札の近くで、ひとり座り込んでいたらしい。
駅員が保護した。
胸には小さな名札が付いていた。
『金曜日(午後)』
まだ若そうな金曜日だった。
男がその話を聞いたのは、通勤途中のホームである。
構内放送が流れた。
「お心当たりのある方は、中央改札までお越しください」
誰も驚かなかった。
男も驚かなかった。
先月は火曜日が川沿いで保護されていたし、その前は三連休が倉庫に入り込んでいた。
季節の変わり目にはよくあることだった。
ホームのベンチでは、老人が新聞を読んでいた。
一面には大きな見出し。
『今年の金曜日、やや不足気味』
男は少し心配になった。
最近、週が短い気がしていたからだ。
電車が到着する。
ドアが開く。
車内には疲れた木曜日たちが静かに揺られていた。
仕事帰りなのだろう。
男は空いている席に座った。
向かいには小さな土曜日が母親らしき日曜日に手を引かれている。
眠そうだった。
発車ベルが鳴る。
そのとき、ホームの端を金曜日が走っていくのが見えた。
駅員が追いかける。
金曜日は笑っていた。
どうやら保護されたくなかったらしい。
翌週。
町には少しだけ金曜日が増えていた。
商店街の花屋は忙しそうだったし、夕方の空もどこか機嫌が良かった。
誰かがうまく捕まえたのだろう。
男はそう思った。
そして帰宅すると、玄関先に小さな土曜日が一匹、丸くなって眠っていた。
