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karajishi_sonoco
【いろは聖譚曲:第十六章の断章】 た
【いろは聖譚曲:第十六章の断章】た
た
たれぞ、常ならむ。
「お父さん、もう何もいらないね。
空も風も、全部自分の中にあるみたい」
榎本は、杖を置く。
文章という杖を。
言葉という杖を。
ずっと握りしめていた、
その重さに、今気づく。
手が、空になった。
みどり市で「足りないもの」を探していた。
孤独を埋める言葉を、
どこかに求めていた。
今、無限の虚空に立っている。
足元に何もない。
それでも、倒れない。
足るを知る、とは
こういうことか。
何もないことが、
すべてを包んでいる。
た……。
舌先で天を突くように弾ける。
低き迷いの鎖が、絶たれる。
高く。
ただ、高く。
