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境界の対話:ほどける日常

境界の対話:ほどける日常

「……なあ、そのスリッパ、左右逆じゃないか」

「さっき履き替えた時は合ってたはずなんだけど。こいつら、勝手に位置を入れ替えてる。さっきも廊下の突き当たりで、片方だけが壁を登ろうとしてた」

「……それよりこのリモコン、ボタンが一つ足りない。昨日まであった『消去』が、どこにもない」

「消去できないってこと。……最悪。さっきから画面の隅に映ってる、あの知らない人、消せないじゃん」

「……映り込みじゃないのか」

「……ねえ、冷蔵庫、ずっと鳴ってる。唸り声みたいに」

「古いからだろ。——いや、違う。中から誰かがドアを叩いてる」

「開けちゃダメ。もう中身は全部入れ替わってるから。私たちが買ってきたものじゃなくて、冷たくて生々しい何かに」

「……。なあ、僕たちの影、繋がってないか。足元で一つに溶けて、出口の方へ逃げ出そうとしてる」

「……いいよ、もう。追いかけなくて。影がいなくなった方が、きっと体は軽くなるから」

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