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道具の果て

道具の果て

教壇の床に、チョークの粉。淡く積もる。
田舎の大学。古い校舎の匂い。
教授はこの教室を「濾過装置」と呼んでいた。
「諸君。我々は世界の被造物ではない。世界を切り裂くナイフであれ」
分厚い眼鏡を外し、教卓を指先で叩く。乾いた音だけが響いた。
初夏の午後。窓の外で風が田を渡り、青い稲が波打つ。
教授は一人の学生の未完成の詩を読んでいた。
指先が、書きかけの一行で止まる。
皮肉のつもりの笑みが、途中で止まったまま。
胸の奥で、音もなく何かが崩れる。
教室の壁が輪郭を失う。空気が透明な刃になる。
頬の産毛を、風が逆撫でる。
教卓の前に、教授はいなかった。
使い古された黒板消し。
誰にも拾われず錆びていく方位磁石。
書きかけのチョークの粉、教壇に。
光が視界の端で滲み、窓の外の稲穂が、白く融けていく。

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