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nakameguromt
せりふ三題噺 胃カメラかにレース
夫と結婚してそろそろ40年。ルビー婚式というのだそうだ。
子育ても終わり、定年退職後は自宅にずっといる熟年夫婦特有の、険悪ではないが決定的な距離感を感じている。
先月受けた市の検診、がん検診もやっており、そのひとつに胃カメラがあった。
郵送で問題無しとの結果がきて、ほっとした。
気分爽快で今夜は奮発してカニ鍋にしようとスーパーで買い物した。
夕食は同じ空間にいるのに、お互いを見ずに黙々とカニと向き合っていた。
夫から「どこも悪くなくて、良かったじゃないか」と言われた。
「ええ、安心したわ」と答えた。
ふと見ると窓辺のレースのカーテンが揺れていた。
「すきま風かな?」夫は窓をきっちり閉めた。
夫の背中に向かって私はポツリと言った。
「すきま風じゃなくて、さっきから一言もしゃべらない私たちのせいよ。カニを食べる時って、どうしても無口になっちゃうものね」
夫は一瞬きょとんとした後、「…たしかに、会話にすきま風が吹いてたな」と、カニのはさみを握ったまま小さく笑った。
「よし、検査も無事に終わったし、お祝いに俺の太いカニの脚も食べていいぞ」
差し出されたカニの脚を見つめながら、私は思った。40年目のルビー婚式。私たちの距離感は、きっと冷たいすきま風ではなく、お互いが心地よくいられる「ちょうどいい風通しの良さ」なのだと。
※はらとけい様 どうよろしくお願いします。
■セリフ
「すきま風かな?」
■三題
・胃カメラ
・かに
・レース
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