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真夜中の扇風機 風まかせ文芸部

 今でも夏になると時々思い出す事がある。
子どもの頃はエアコンなんて無くて、夜は扇風機かうちわだった。

ある夜、夜中に目を覚ました。誰かに呼ばれたような気がしたのだ。

周りを見渡しても起きているのは自分だけなのであれっと思った。

ところが、また話し声が聞こえた。
それはカタカタと首を振る扇風機だった。

「まりちゃん」

聞き違いかと思ったけれど、やっぱり扇風機から声がする。

その声は、遠く離れた田舎に住む、大好きなおじいちゃんの声によく似ていた。

扇風機は、首をゆっくりと振るリズムに合わせて、ぽつり、ぽつりと語りかける。

「まりちゃん、お腹を出して寝たら冷えるぞ」
「ちゃんと布団をかけなさい」

少し驚きながらも、怖さは全く感じなかった。言われた通りに夏用の薄いタオルケットを胸まで引き上げる。

すると扇風機は「よしよし」と満足したようにブーンと静かな音を立てて、それきり静かになった。

私は心地よい風に包まれて、いつの間にか再び深い眠りに落ちていった。

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翌朝、朝ご飯の匂いがして目が覚めた。
居間に行くと、お母さんが電話を切ったところで、不思議そうな顔をしている。

お母さんが言った。
「今ね、田舎のおじいちゃんから電話があったのよ。ゆうべ、まりちゃんが風邪をひいてないか急に心配になって、夢の中で『布団をかけなさい』って声をかけたんだって」

私は昨夜の扇風機のことを思い出し、胸が温かくなった。


大人になり、エアコンの効いた部屋で過ごすようになった今でも、夏が来るとあの古い扇風機と、遠くから届いた優しい声を思い出す。


※i様、今回もどうぞよろしくお願いします。 

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