サイレントリーダーの経営戦略ノート(第31回)なぜ優秀な人材がいるのに、組織は混乱するのか? ― ルールは「管理」の道具ではない ―
優秀な人はいる。
真面目な人もいる。
頑張っている人もいる。
それなのに、なぜか組織は混乱する。
・同じ説明をしたはずなのに、解釈が違う
・やった/やっていないで揉める
・「そんなつもりじゃなかった」が頻発する
・感情的な衝突が起きる
この現象は、能力の問題ではありません。
ほとんどの場合、原因はひとつです。
“ルールが曖昧”なのです。
混乱の正体は「能力不足」ではない
組織の混乱を、私たちはついこう解釈します。
部下の理解力が足りない
上司の伝え方が悪い
コミュニケーション不足だ
しかし、本当にそうでしょうか。
同じ日本語を使っているのに、
同じ資料を見ているのに、
同じ会議に出ているのに、
なぜ認識がズレるのか。
それは、“判断基準が共有されていないから”です。
つまり、
ルールが設計されていない。
ルールとは何か?
ここで一度、定義を置きます。
ルールとは――
「人を縛るもの」ではない
「自由を奪うもの」でもない
ルールとは、
迷いを消す設計です。
もっと言えば、
認識のズレを排除するための設計です。
ルールが曖昧な組織で起きること
ルールが曖昧な組織では、
必ず“感情”が入り込みます。
「普通こうでしょ」
「常識的に考えて」
「ちゃんとやって」
「なるべく早く」
一見、自然な言葉に見えます。
しかしこれらはすべて、
判断基準が人によって変わる言葉です。
基準が曖昧なまま動くとどうなるか。
上司の“感覚”が正義になる
部下は“空気”を読むようになる
評価は“印象”に寄る
不満は“感情”として蓄積する
つまり、
統治ではなく、感情支配が始まる。
なぜ組織に「ルール」が必要なのか
「ルールが増えると、窮屈になる」
そう感じる人は多いと思います。
でも、マネジメントの現場で起きている混乱の多くは、逆です。
ルールがない(または曖昧)だから、迷いが増え、責任が分散し、他責が増える。
ルールは“縛るため”ではなく、
組織のエネルギーを一点に集めるための設計です。
そして、ルールには大きく2種類あります。
ここを取り違えると、上司も部下も一気に苦しくなります。
1. ルールには「スタンス」と「アクション」の2種類がある
スタンスルール=難易度ゼロのルール
スタンスルールとは、「できる/できない」ではなく「やる/やらない」だけで決まるルールです。
たとえば、
挨拶をする
遅刻をしない(期限を守る)
打刻をする
服装を正しく整える(制服・スーツなど)
これは能力の問題ではありません。
基本的に、事故などを除けば「やろうと思えば誰でもできる」領域です。
だからここは、曖昧にしてはいけない。
アクションルール=難易度があるルール
一方でアクションルールは、難易度(できる・できない)が存在するルールです。
売上目標の達成
新規アポ獲得数
クレーム削減
資格取得
生産性向上
ここにはスキル、経験、環境、配分、設計が絡みます。
だから100%達成できるとは限らない。
2. 2つを混ぜると、組織が壊れます
① スタンスルールを「相談」し始めると、規律が崩れる
スタンスルールが守られていない時、やりがちな失敗があります。
上司:「なんでできなかったの?」
部下:「すみません、事情があって…」
この瞬間、組織に何が起きるか。
“守らなくても理由があればOK”という前例が生まれます。
そして次から、ルールは「交渉可能」になります。
スタンスルールは、原則として
守るまで言い続けるが正解です。
理由を聞くことは、優しさではなく、
“例外の入口”を作ってしまうことがある。
② アクションルールを「叱責」で処理すると、成長が止まる
逆に、アクションルールをスタンスルール扱いしてしまうと、こうなります。
上司:「なんでできないんだ。やる気がないのか」
部下:(萎縮)→(言い訳)→(他責)
アクションルールでは、できなかった時に必要なのは説教ではなく、
管理=原因特定と改善設計です。
何が不足だったのか(情報/時間/スキル/判断)
どこで止まったのか(工程)
次に変えるのは何か(行動変化)
必要な権限や新しいルールは何か
ここを丁寧にやるほど、部下は自走に近づきます。
3. スタンスルールは「土台」、アクションルールは「アクセル」
スタンスルールは
「社員の位置ずれを直し、組織の規律を整える“土台”」です。
土台が崩れているのに、アクセルだけ踏ませるから事故る。
挨拶ができない
期限が守れない
報連相が抜ける
基本が曖昧
この状態で「売上を上げろ」「成果を出せ」と言っても、
上司の指示が通らない=設計が効かない。
だから順番がある。
スタンスルールで“組織の地面”を固める
アクションルールで“成果の再現性”を作る
これが、静かなマネジメントの基本です。
4. サイレントリーダーがやることは「正す」ではなく「分ける」
サイレントリーダーは怒鳴りません。
正論で殴りません。
代わりに、淡々と分けます。
これは「スタンス」か?(やる・やらない)
これは「アクション」か?(できる・できない)
だから対応は「徹底」か「管理」か?
この仕分けができるだけで、
マネジメントの摩擦は驚くほど減ります。
