青ブラ文学部 『聖書の裏側』
仕事で出張。
宿泊先のホテルに到着して、しばらく落ち着いた後で、据え付けのデスクの引き出しを何の気なしに開けてみる。
一冊の聖書。
これ、よくあるな。
なんでなんだろ?
悔い改めること、何かあっただろうか?
そもそも自分、無神論者だからな。
本を裏返すと、そこに真っ赤な文字で、
「幸せ?」
と書かれている。
幸せ……か。どうなんだろ?
改めて考えてみると。
今日の仕事は順調だった。
取引先との商談もまとまりつつある。
これで、自分の業績評価はアップするかもしれない。
とはいえ、それがホントの幸せに繋がるのだろうか。
嬉しいけど、幸せって違うような気がする。
じゃあ何だ?って聞かれると、うまく答えられないが……強いて言うなら、これからぐっすり眠れること、だろうか。
この聖書の裏に「幸せ?」と書いた人は、その時、幸せだったのかな?
私と同じように、ぐっすりと眠れる夜を迎えていたのだろうか。
それとも、不安で眠れない夜を過ごしていたのだろうか。
人の心に安寧を与えてくれるはずの聖書の裏に書かれた言葉。
真っ赤な文字は、「幸せ」そのものに警告が灯っているようにも見える。
……考え過ぎだろうか。
スマホを手にして、家族のグループLINEに、
「今日も無事に仕事終わったよ。あとは寝るだけ」
と、メッセージを送る。
「お疲れ様。夕飯何食べた?」
「福岡だよね?お土産何がいいかなー」
「パパ、スマホの調子が悪いの。早く帰ってきて直してー」
立ち続けにいつメンからメッセージが上がる。
ああ、そっか。幸せだったな。
このやり取りがある限り、早く仕事を終えて帰りたいと願う。
帰りたい場所があること、これは、胸を張って幸せだと言える理由だ。
聖書を引き出しに戻し、ベッドに入る。
明日は、福岡の美味いもの食って帰ろう。
福岡名物のお土産と、家族で話せる土産話を持って。
こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
