せりふ三題噺 『第二ボタンを連打する。たい焼き買って駐輪場にて』
駐輪場で待ち合わせ。
十分遅れてやって来た友達は、申し訳なさそうに俺にたい焼きを差し出した。
「これで何とか、怒りをお収めください」
「別に怒ってないよ。十分くらいで」
「ホントに?心が広いね。それなら途中でたい焼き買ったりしなければ、もっと早く着いたんだけど」
「本末転倒だな。俺、そんなにたい焼き好きなキャラに見える?」
「……見えないね。どっちかって言うと、バウムクーヘン好きかな」
「それもあんまり好きじゃない。何見てそー思うんだよ。……ところでさ、約束のもの、持ってきた?」
友達は背負っていたリュックを下ろして、中から Switch 2 を取り出した。
「ご要望のゲームはすでにダウンロードしてありますので、何卒ご贔屓に」
「何だそれ。で、どーやってやるの、これ」
「簡単だよ。第二ボタン連打してればほとんど勝てる」
「第二ボタンって……Bボタンってこと?分かりにくいよ」
「えー、数字で割り当てた方が分かりやすいじゃん。俺達は数字に支配されて生きてんだぜ」
「またわけの分からんことを……おいちょっと待て。このセーブデータ、名前がお前の兄貴になってるけど」
「ああ、うん。兄貴の Switch から、無断で拝借して持ってきた。内緒だからな。俺の兄貴、喧嘩っ早いことで有名なんだから」
「知ってるよ!ついでにめっちゃ喧嘩が強いって」
「確かに、俺も何度殺されると思ったか………でもまあ、平気だよ。帰りにさ、たい焼き買って帰るから」
「どんだけたい焼き頼みなんだよ。そもそも、お前の兄貴はたい焼き好きなキャラなのか?」
「いや、どっちかって言うとどら焼きかな」
「じゃあダメじゃん!」
「中身はあんこで一緒じゃん。あんこ好きなキャラには違いないよ。大丈夫、イケる」
「まあ、あとはお前を信じるしかないけど……じゃあ、このゲームやらせてよ。どこでやる?」
「え?ここでいいじゃん。この駐輪場で」
「いやいや、このままここで立ってやるのかよ。どっかもっと落ち着いたとこで……」
「兄貴がさ、バイクで追いかけてくるかもしんないからさ、そん時にすぐにチャリ乗って逃げられるようにしといた方がいいと思うんだよな」
「今すぐどら焼き買って帰って返してこい!」
こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
