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風まかせ文芸部 『真紅』

シンクに真紅の液体。
吐血した。
俺、死ぬのか?本気でそんなことを考えた。
「大丈夫だって。胃がんか食道がんってとこだろ」
「大丈夫じゃないじゃん。がんじゃん」
「いや、がんとは決まってない。胃潰瘍かもしれない」
「安心できないよ。重い病気しか浮かばない」
「まあ、血を吐くってのは重い病気だろうな」
「何だよ、さっきから。俺の心の声にしちゃ、不安ばっかり煽って」
「心の声なんだから、お前の不安を言葉にしてるだけだよ」
「わざわざ教えてくれなくていいよ。目の前の状態を見れば、嫌でも分かる」

シンクに真紅の液体。
ホントにこれは俺の血か?
なんで急にこんな。
昨夜、飲み会があって、密かに恋していた女性が異動してしまうことになり、その送別会だった。
そりゃあ悲しくて、浴びるように飲んだわけだ。
でもだからって、シンクに真紅の液体を吐くほどには…まあ、浴びるように飲んだんだからそれもあり、か。
じゃあ、このまま死ぬのだろうか。
彼女にもう会えないなら…それも悪くないかな。

「アホか。人生はこれからだろ。そんなんで死んでどうすんだよ」
「また出てきやがったな。さっきは不安ばっか煽ってたくせに、急に背中を押すようなこと言い始めて」
「まあ、俺はお前の心の声だからさ。お前の都合のいいように現れるわけだよ」
「俺とお前はシンクロしてるってことか」
「そう、シンクに真紅の液体を吐くほど、辛苦を感じているわけだから、この現状から脱する方法を一緒にLET'S THINK!ってなこと」
「お前…誰かになろうとかしてないか?」
「いやいや、俺はお前だって」

シンクを離れ、寝床に戻る。
枕元に、赤ワインのビッグボトル。
彼女から、お世話になった職場へのお礼の品で、俺の密かな想いを知っている同僚達が、当たり前のように俺に押し付け…いや、貰う権利を譲ってくれた。
…まったく密かじゃなかった。

赤ワインか。
真紅の飲み物だな。
確か今朝も、寝起きでガブ飲みした記憶がある。
こんな飲み方してたら、ホントに吐血して死んでもおかしくないよな…ん?
真紅の飲み物…ん?

「まあ、心の声がわざわざ言うまでもないよな。次の恋も元気に頑張れよ」

こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。

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