アマノ文筆クラブ 『現金な奴』
さて、そろそろ帰るとするか。
こんなに長居するつもりはなかったんだ。
サクッと終わらせてサクッと帰るつもりだったんだよ。
途中でさ、予定外の仕事が入ったからね。
ホント、ビックリしたよ。
俺の仕事はさ、まあいわゆるメッセンジャー、プラス集荷って感じで、伝えるべきことを伝えて、貰うもの貰ったら終わりって感じで、今日は三人の予定が入ってて、その三人目。
ある男の部屋を訪れて、ベッドに横たわるそいつの耳元で、
「お前の命は今日限りだよ」
と囁いてやった。
驚いたように目を覚ました男が、
「待ってくれ。地獄の沙汰も金次第と言うだろ。金ならいくらでも出す。取引しないか?」
とか言い出したんだよ。
確かその男は、大富豪の資産家だった。
死んでしまったら、そのお金はすべて失うことになる。
「俺達死神が、人間の使う金を欲しがると思うか?」
俺達は、貨幣による売買などやらん。
人間ってやつは、どこまで愚かな生き物なんだか。
「じゃあ、あんたの欲しがってる、人の魂ってやつでどうだ?」
「魂だと?魂がどうしたっていうんだ?」
「俺の代わりに、三人分の魂を用意するよ。それを持っていけ」
「魂を用意する?どうやって?」
「俺から金を借りてさ、首が回らなくなってる奴らがいるんだよ。もう生きる術も失くしてるような奴らだ。そいつらの魂を持っていけ。俺がそいつらと話をつける」
「おいおい、悪魔並みに極悪非道で現金な奴だな。自分が助かるために、他人の命を差し出そうってのか?」
「自分の命を守るために手段を選ばないのは当たり前だろ。生きててナンボだ。……どうだ?取引成立か?」
「んー、まあ、悪くない話かな。今月のノルマを前倒しで達成できるってことだからな」
「だろ?よし、じゃあそいつらに、あんたとの取引を納得させるから、ちょっと待っててくれ」
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さて、そろそろ帰るとするか。
ひょんなことから、今日は六人分の魂が手に入った。
……え?一人多くないかって?
いやいや、もともと予定の三人に、新たに三人が追加されたからね。
ああ、あの富豪のおっさんには、三人への連絡が済んだ後で伝えたよ。
「俺達死神が、人間との約束を守ると思うか?」って。
俺達は、信用による取引などやらん。
人間ってやつは、どこまで愚かな生き物なんだか。
こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
