シロクマ文芸部 『ひとりごと』
ひとりごとをつぶやいた。
「昨日の昼飯は美味かったな。あんなの俺、作れるんだ。今日も食べたいから、頑張ってみようか」
今日の夕飯も美味かった。
自分に礼を言いたいくらいだ。
「明日も食べたいな。レシピはもう完璧だろ。一人暮らしだからさ、美味いもん作るスキルは必要だよな」
ひとりごとには返事はない。
自分しかいない空間に、言葉が虚しく響くだけ。
「あの娘と付き合ってるんだろ。めっちゃ可愛いよな。なんで俺なんかを好きになってくれたんだろ。イケメンでもないのに」
内面を見てくれたのかな。
だとしたら、俺達は付き合ってると言えるのか?
でも、俺のスマホは彼女からの愛のメッセージであふれてる。
今度一度、お相手したい。
「今日の仕事上のミスだけどさ、あれ、俺が悪いのかな?前提資料を作った時点で間違ってたんだと思うけど。まあ、前提資料作ったのも俺だけどさ、ミスに気付けなかったのは仕方ないと思うんだよね」
職場にてひとりごと。
窓の外には都内の夜景が広がっている。
そして、窓ガラスに反射する職場の風景には、俺が一人残業する姿が。
「だからさ、この後始末は俺がやるべきだと思うんだよ」
「まあ、そうだろうな。あんなミスはそうそうやるもんじゃない。やっぱりさ、向き不向きがあるんだよ。その辺をうまくやらないとさ」
俺だけど俺じゃない。
俺がつぶやいてるのに俺の言葉じゃない。
すべて、ひとりごと。
俺の中に棲む、6人の人格それぞれのひとりごと。
こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
