アマノ文筆クラブ 『色眼鏡』
人を色眼鏡で見るなと言われた。
あれは確か、高校の時の担任の先生だった。
だけど、その先生こそ生徒を色眼鏡で見ていたような気がする。
クラスの生徒の扱いが違いすぎて。
可愛い娘にやたらと話しかける。
試験のフォローまでしてあげてた。
まさに、下心満載。
そのくせ、自分になびかない生徒には手厳しい。
ああ、あの色眼鏡で見るなってのは、そんな自分を色眼鏡で見るのはやめろって意味だったのかな。
俺はマトモな教師だと。
いつも教壇に立ち、数十人の生徒の視線を一斉に受けるたびに、エロ教師とかエコ贔屓とか、自分が責められてる気がして怖かったのかもしれない。
自業自得だが。
昔の立体画像は、青と赤と色眼鏡を使って見ることが出来た。
色眼鏡を使うと、平面だった画像が飛び出して見えるのだ。
もしかすると、本当の色眼鏡も、そうやって人の本性を浮き上がらせ、立体的に見せる術なのかもしれない。
あの先生の素性が曝されたように。
平面的な部分ではマトモを保っていたはずだが、化けの顔を突き破って飛び出してきた立体的な部分を可視化することが出来た。
あの、色眼鏡のおかげで。
赤と青の、見た目おバカっぽい色眼鏡のおかげで。
もう今は見ることのなくなった、あの色眼鏡。
最近では、色眼鏡ならぬゴーグルを使って、立体化された仮想世界を体験することも出来る。
あくまで仮想世界だが、そこで味わえる臨場感は半端ない。
ゾンビが本当に目の前に襲い来る。
高層ビルの屋上から、鉄骨一本の上を渡って逃げる。
孤高のガンマンとなり、襲い来るゾンビを次々と撃ち倒す。
エコ贔屓の教師を糾弾して、学級閉鎖にまで追い込む。
退職勧告された教師は、俺を色眼鏡で見るのはやめろ!と叫んで襲い来る。
私は孤高のガンマンとなり、襲い来る教師を……。
とにかく、色眼鏡は良くない。
だけど、それがその人の本質を見抜く術になることもある。
裸眼では見えなかった本当の姿が、フィルターをかけることで浮かび上がることだってある。
それが、イイ結果を生むか、悪い状況に追い込まれるか、そこは神のみぞ知るかもしれないが、先入観が自分を救うことだってあるだろう。
転ばぬ先の杖、備えあれば憂いなし、君子危うきに近づかず。
人生を、ずる賢く生きるために。
色眼鏡を持たずに、素直さに付け込まれて騙されることのないように。
あの先生から、クラスでイジメをやってる奴の名前を教えろと言われたことがある。
疑われていたのは私の仲良くしていた友達だった。
知りません、と答えたら、あいつならやりそうだろ、と、友達を名指しした。
先生の色眼鏡は正しかったのかもしれない。
だからこそ私は、自分の視界を曇らせて、真夜中のサングラスのように見えない暗闇を作っていたのかもしれない。
その友達は今、刑務所の中にいる。
こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
