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3つのお題に空想のひらめきを

⏳お題③:「兄のお下がり」

実家から、兄のお下がりが届いた。
前日に届いた母からの手紙には、
「あんたなら着れるでしょ。着てやってちょうだい」
そんな言葉が書かれてあった。
いや、着れるけどさ。
一方的に送りつけてくんなよ。
俺にだって、服の好みとかあるんだからさ。
まあ……兄貴の服のセンスは悪くない。
段ボールを開けてみると、見覚えのある服がいくつも出てきた。
兄貴がそれを着て笑っていたことを思い出す。
……なんだか、涙が出てきた。

俺と兄貴は、そんなに仲のいい兄弟じゃなかった……と思う。
どうなんだろ?
男同士って、そんなにベタベタしないよな。
兄貴、なんかいつも冷静で、どうしても俺は、見下されているような気がして仕方がなかった。
勉強もスポーツもそつなくこなして、弟の俺には手の届かないところにいる存在だった……気がする。
でも、こんな風に、本当に手の届かないところに行ってしまうなんて、思いもしなかった。
勉強やスポーツにどれだけ長けていても、自分を蝕む病魔を退けることは出来なかった。

「うわ、これ、兄貴の制服じゃん。なんでこんなもんまで送ってくるんだよ」
小学校の時の体育着まである。
こんなの、どうしろってゆーんだ?
俺が着れるわけないだろ。
きっと母親は、遺品整理の過程でこれらの処分に困り、捨てるのは忍びなく、かと言って手元に置いておくことで思い出に縛られ続けるのを避けたかったのではないだろうか。
そして俺に押し付けた。お下がりというテイで。
俺だって、心が張り裂けるほど苦しいのに。

本当は、どこかで憧れてたのかもしれないな。
あんな風にはなれないから、自分とは一番遠いところにいると遠ざけてただけで。
ずっと、あんな風になりたかった。
あいつは俺の、お手本であり、ロールモデルだったのかもしれない。

段ボールから、見覚えのあるセーターを取り出す。
季節はまだ早いが、これなら着てみたいと思えるデザインだった。
……あ、これ確か、俺が家を出る日に、玄関先で兄貴が着てたやつ……見送ってくれたっけな、クールな顔しちゃってさ。
あの時は、もう会えないなんて思いもしなかった。
だから、ちゃんとサヨナラも言わずに……手を振るぐらいはしたんだろうか。

兄貴のセーターを着て、洗面台の鏡の前に立つ。
母親の思惑通り、今の俺にピッタリのサイズだ。
顔がそんなに似てるわけでもないのに、なんでこんなに兄貴に見えるんだろう。
俺が、兄貴に会いたいって思ってるからかな。

鏡の中の自分に向かって、サヨナラとつぶやいた。
何も答えは返してくれないけれど、きっと伝わっていると信じて。
もう少し寒くなって、今度実家に帰る時は、このセーターを着ていこう。
母親を泣かせてしまうかもしれないけど、もしかしたら、俺と同じように、お別れを伝える機会を与えられたと思うかもしれない。
バカみたいだけど……俺達にとって、兄貴はかけがえのない存在だったから。

実家から密かに持ってきた、兄貴の形見。
ガンプラとかグローブ、そして、マンガ。
兄貴が作ったり、使っていたモノに囲まれて、俺は暮らしている。
すべてが兄貴のお下がりで、俺の宝物だ。

大切にするよ

こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。

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