3つのお題に空想のひらめきを
⏳お題③:「記憶ときらめく風の通り道」
ここは、どこ?
私はなんでこんなところにいるの?
爽やかな風が吹き抜ける。
まるでキラキラと輝いているかのように、空に散りばめられた細かな粒子達。
私がいた世界はこんなんじゃなかった。
もっと薄暗くて、薄汚れて……陰鬱的だった。
「でもね、幸せだった日々もあったでしょ?」
空から声が降りてきて、私にそう言った。
「誰?……ママ?」
「見て。これがあなたの思い出だよ。覚えてる?」
光の粒子に混じって、懐かしい写真が舞い降りてくる。
すべての写真に、ママの笑顔があった。
「ママだよね。私は?どうしたら会いに行けるの?」
「いつかまた会えるから。この時代を思い出して。あなたにはこんな素敵な思い出があるの。だからきっと頑張れる」
光り輝いて、風が吹き抜けて、消えた。
誰かが照明を消したかのように、暗闇に落ちた。
薄汚れた部屋で目覚める。
誰かの呼ぶ声が聞こえる。
私は慌ててベッドから飛び出して、パパのもとへと走った。
パパに怒鳴られないように。
お酒を飲んで、仕事も辞めてしまって、ずっと家にいて、私にも攻撃的になった。
ママがいた頃は、そんなことはなかったのに。
ママは、脳の病気で死んでしまった。
パパが、「俺から受けるストレスに負けて死んだんだ」って言っていた。
ストレスなんてよく分からない。
でも、ママを殺してしまうほどの、恐ろしいものなんだってことは分かった。
「お前、何時まで寝てるんだよ。朝飯どうすんだ?」
パパが不機嫌な声で私を問い詰める。
「あのね、ママの夢を見たの。嬉しくて、ずっと一緒にいたかった」
パパの動きが止まる。
私は身構える。
「パパへの嫌がらせか?パパのせいでママに会えなくなったって言いたいのか?」
「違うよ。会えなくなったのは病気のせい。パパは何にも悪くない」
パパの瞳に涙が滲む。
「お前に何が分かるんだよ。パパがママに、どれだけ苦労かけたと思ってるんだ」
「苦労かけたのは私も一緒だよ。だけど、夢の中のママは笑ってた」
パパが、私の襟首をつかんで引き寄せた。
「夢の話なんかするな。ママは帰ってこないんだから。お前の夢の中だけで……」
その時、私のパジャマのポケットから、一枚の写真が滑り落ちた。
私達家族三人が、笑顔で写っている写真。
こんな時代があったことも、忘れそうになっていた頃の写真。
「お前この写真……どこにあったんだ?」
「夢の中でね、ママがくれたの。こんな時代があったことを思い出してって」
「ママが……?」
「うん。ママは、キラキラした世界にいたよ。幸せそうだったよ」
「ずっと探してたんだよ、この写真。お前がまだ幼いうちに死んじゃって、思い出がさ、足りな過ぎる気がして」
「思い出はたくさんあるよ。ママが見せてくれた。幼くて私が覚えてないものもいくつかあるけど、写真が証明してくれた。私は幸せだったって」
パパを見たら、顔が涙でグチャグチャになってて、手をつかんで引っ張られたから、叩かれるのかと身構えたら、そのまま強く抱きしめられた。
「これからだって、幸せになろうな。パパも頑張るから。もう一度動き出すから。だから、お前はまだずっと一緒にいてくれよな」
強く抱きしめられて苦しい。
お酒の匂いがする。
「うん。大丈夫だよ。一緒にいるよ。だから、パパもストレスなんかに負けないで。もし負けそうになったら、私やママのところに逃げてきて。きっと夢の中で会えるから」
「……ママと?」
「そう。記憶に出会える、きらめく風の通り道があるんだよ。私は見たの」
「……分かった。お前を信じるよ。ママのことも信じる。その通り道のことも」
その日はパパとマックに行った。
家族連れやカップルや友達同士の笑顔がたくさんあって、なんだか幸せになれる場所だった。
─昔、ママと来たことがあったかも─
確かじゃないけど、ハンバーガーを食べながら微笑むママの顔が脳裏に浮かんだ。
パパに聞いてみようかと思ったけど、美味しそうにシェイクを飲むパパを見ていたら、今日は二人だけで過ごしたいなと思えて、聞かないでおくことにした。

こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
