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風まかせ文芸部 『芸術』

鮮やかな色使い。
里山をキャンバスに、連なるように描かれている。
油絵のような強い赤、黄色、オレンジ。
この季節だけの芸術。
期間限定の特別展示だ。

田んぼのあぜ道の端っこに、キャンバスを立てた。
この素晴らしい作品を模倣したい。
里山の上に広がる秋空も含めたこの景色を、この小さなキャンバスに収めたい。
人間が作り上げられる限界サイズで、この壮大さを表現できるだろうか。

遠く山鳩が鳴いている。
黄金色に輝く稲穂が、さざ波のように揺れている。
幸せな風景が目の前に広がり、しばらく筆を止めて山々を眺めていた。

「気持ちのいい天気ですね」
犬の散歩をするおばあさんに声をかけられる。
「山の絵を描いてるんですか?」
私の絵と遠くの山々を交互に見比べる。
「この、秋の風景をね、写し取ってみたいと思いまして」
「絵描きさん?」
「いや、趣味で描いているだけです。今日は休日なんで」
「趣味で絵を描くなんて素敵な休日ね。おじいちゃんにも勧めてみようかしら」

おばあさんはそう言って微笑んで、軽く頭を下げてあぜ道を歩いてゆく。
その後姿に何故か惹かれて、スマホを取り出して散歩するおばあさんを写真に収めた。
この秋の風景の中に、彼女の姿を取り込みたい。
そうすれば、この作品も単なる模倣ではなくなるんじゃないか、そんな打算もあった。

人が描く世界に人がいる。
自然が作り出す芸術の中に人はいない。
そこに付け足されただけの存在だ。
だけど、この絵にはこの後ろ姿が必要だったとさえ思える。
素人画家の単なる思い込みかもしれない。
それでも、人が生み出す芸術に答えなんかないはずだ。
私は、キャンバスに向き合い、まずは秋色に染まる山々を描き始める。

どこか遠くで、ホオジロが鳴き始めた。
この声や、風の音まで感じられるような、そんな作品をこのキャンバスに残したい。

こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。

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