せりふ三題噺 『いちご好きなのは、パジャマの文鳥』
飼っていた文鳥が鳥かごから脱走したらしい。
朝起きて、空っぽの鳥かごの前で呆然とする。
そこに玄関のチャイムが鳴り、私はパジャマのまま、玄関のドアを開けた。
彼氏の卓也が立っていて、
「誕生日おめでとう!……って、まだ着替えてないの?」
と、花束を私に差し出す。
私は、彼の顔を見た途端に何だか気が緩んで、
「ひーちゃんがいなくなったの。朝起きたら空っぽで」
涙がポロポロと流れ落ちる。
「ひーちゃん?……ああ、あの鳥?」
「そう、文鳥のひーちゃん。鳥かごから逃げ出しちゃったのかな?」
「んー、空を飛ぶ動物を探すのはなかなか……何かさ、好きなものとかないの?好物の食べ物とか。それを窓際に置いて、呼び戻すとか出来ないかな?」
「好物……えーとね、彼女、いちごが大好きだった。昨夜もね、私が持って帰ったあまおうを二人で食べたの」
「いちごを一緒に?鳥かごに入れてあげたの?」
「ううん、その時はね、窓を全部閉め切って、鳥かごから出してあげたの。それで、ひーちゃんを食卓のテーブルの上に乗せてあげて、一緒に食べたんだ。喜んでたよ」
「へー、食卓で、ね。……で、その後、ちゃんと鳥かごに戻してあげた?」
「えっ?……あ。覚えてない……」
「昨夜はさ、職場の友達が、君の誕生日の前祝いって飲み会開いてくれたんでしょ。結構飲んだんじゃないの?」
「そう。あまおうも、友達が誕生日プレゼントって言ってくれたの。ひーちゃんがいちご好きなの知ってるから」
「ああ、なるほどね。実はさ、さっきからずっと気になってることがあって。君のパジャマの胸ポケットにさ、小鳥のイラストがあって可愛いなーって。なんかちょうど、胸ポケットに入り込んで顔だけ出してるみたいなイラストでさ、でも少し、立体感のある絵だなーって」
飲み過ぎて、自分の誕生日で浮かれまくってて、ひーちゃんにも大盤振る舞いで一緒にいちご食べて、その後、鳥かごに戻すのを忘れてた。
そしたら、寒かったのかな、私の布団に潜り込んで、パジャマの胸ポケットに収まったってこと?
ずっと私の胸元にいたってこと?
うわー、潰さなくて良かった。
もしも私が巨乳だったりしたら……いやほっとけって。

こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
