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せりふ三題噺 『観覧車に乗って靴下を脱いだら、マシュマロが触れない』

夕暮れの観覧車。
二人っきりの個室。
上空約100m。完全なる密室でもある。
くつろいで、靴下を脱ごうとしたら、彼女に冷たい目で見られた。

「ごめん。なんか我が家みたいにリラックスしちゃって」
「リラックスし過ぎだよ。下ではスタッフの人が待ってるんだから」
「そうだね。でもさ、君がいるだけでなんかもう安心なんだよね。一緒になったら、きっとうまくいくよ」
「何よ急に?距離縮めすぎじゃない?」
「いや、せっかく二人きりなんだしさ、本音で話したいなと思ってさ」
「本音?別に、普段偽ってるつもりもないんだけど」
「分かってるよ。だけど、なかなか言えないこともあるだろ」
「言えないこと?例えば?」
「例えば……早く君のマシュマロに触れるようになりたいな、とか」
「……何言ってんの?」
「これは、君へのストレートな愛の表現だよ」
「ストレート過ぎるでしょ。それをこの密室で言わないで」
「ほっぺた触られるの、そんなに嫌なの?」
「……ほっぺた?それが私のマシュマロ?」
「え?他に何が……ああ、他にもあるね」
「もういい。言わないで。ねえもっとさ、ロマンチックな話題とかないの?」
「ロマンチック……それなら、ほら見て、夕焼けが綺麗だよ」
「ホントだ。沈んでいくね。今日という一日が終わるんだね」
「こっちの席からだと後ろだからよく見えないんだ。君の隣に行ってもいい?」
「うん、いいよ」
「じゃあ……うわ、イイ匂いがする。こんなに君に近付いたの初めてかも。ドキドキするよ」
「ちょっと、そのリアクションやめてくれる?せめて、地上に降りてからにしてくんないかな」
「どうして?」
「えっ?いやなんかさ、変な空気になっちゃうんじゃないかと思って」
「変な空気……?甘いムードじゃなくて?」
「あのさ、私達、まだ付き合ってるわけでもないんだから、そんなムードは作らなくてよくない?」
「まあ、確かに……じゃあさ、ここから見下ろして、次に何に乗るか決めようよ。」
「えっ?まだ乗るの?もう日も暮れるしさ、そろそろ帰る時間じゃないかな」
「えぇー、もう少しいいじゃん。……ほら、あれ!あの…なんだ?なんか、亀の頭みたいな乗り物。あれに乗ろうよ」
「あれ?亀?……亀の頭?」
「そう、ほら、亀の頭から、凄い勢いで水を放出してる……ってあれ、噴水のオブジェか。乗り物じゃないや」
「あー、もうちょっと離れてくれる?近すぎるかな」
「ああ、ごめんごめん。亀の頭みたいなアトラクションに興奮しちゃって。噴水だったけど」
「それももう言わないでくれる?この至近距離で」
「……なんかさっきから君、意識し過ぎじゃない?マシュマロとか、亀の頭とか。全然変な意味じゃないよ」
「……そっか……そーだよね。なんか私一人で……ちょっと恥ずかしい」
「恥ずかしがることはないよ。これから二人、付き合っていけば、もっとお互いをさらけ出すことになるし」
「いやまだ付き合うって決めたわけじゃ……」
「あ、それじゃ次はあそこに行こうよ。あのネオンがきらびやかなアトラクション。園外だけど」
「さらけ出し過ぎじゃない?あれは明らかにアトラクションではないよね」
「でも僕はきっとあそこなら、どんな乗り物よりも乗り心地良く、楽しめると思うんだ」

「もう、帰るね」

こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。


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