アマノ文筆クラブ 『かわいいライトを買ったよ~』
ピンポーン。チャイムが鳴る。
ドアを開けると、大きな荷物を抱えた君が立っている。
「それじゃ、今日からお世話になります」
君が深々と頭を下げる。
「他の荷物は、後から引っ越しの人達が運んでくれるから」
君との同棲生活が始まる。
夢にまで見た、というと大げさだけど、ずっとこの日を待っていた。
君とずっと一緒にいられる生活。
君と僕の部屋を行ったり来たりしなくていい生活。
「その荷物は、何を持ってきたの?」
「んー、いろいろ。このトランクに入るだけ持ってきた」
「とりあえず生活できるグッズは揃ってるんだけどね、この部屋にも」
「まあそうだけど、常備したいモノが他にもいろいろあるんだよ、女の子は」
「了解です。じゃあ、荷物を運ぶよ」
2LDKのマンション。
二人で暮らすにはちょうどいい。
そのうち、手狭になる時が来るかもしれないが、まあしばらくはここに住むことになるだろう。
君と一緒なら、どこでだって文句はない。
Home Sweet Home ってやつだ。
リビングのソファで、君がトランクの中身を取り出してゆく。
「これ、私がね、中学生の時から大事にしてるぬいぐるみ。子供っぽいけど、皆こーゆーの持ってるよね?ね?」
手のひらサイズのぬいぐるみ。
何だこの動物は?……ニワトリ?
「で、これは私のお気に入りのサンダル。あなたのも色違いで買ったの。かわいいでしょ?」
……かわいい。花柄のサンダル。
これを僕にも履けと?
「でね、これ見て。かわいいライトを買ったよ〜どう?これを二人の寝室に置くの」
二人の寝室か。少し心拍数が上がる。
これから毎晩同じベッドで……いや、今は考えるな。
「そのライトは……キノコ?なんか意味深な形してるね。結構大きいサイズで……」
いやだから考えるなって。何年付き合ってんだよ。
君が愛おしそうに、ライトに顔を近付ける。
気のせいに違いないが、心なしかライトが大きく輝いたように思える。
「あー、なんか、僕達の未来を照らしてくれてるみたいだね。センスがいいと思うよ」
心にもあるかないかのセリフを吐く。
うん。夜が待ち遠しい。
……いや、このライトを使えるからね。
「あんまり心がこもってないな。こんなの使いたくないって思ってる?」
いや……しっかり使わせてもらうよ。
君の頬をオレンジに照らすライトは、とってもいいムードを醸し出す。
「私、キノコ好きなんだ。今夜はキノコのマリネを作りたいんだけど……好き?」
「好き!……食べたことないけど」
「ちょっとーなんか壊れてんじゃないの?今後が心配になるよ」
「いやいや大丈夫。……ところで、これが君の常備したいモノ?」
「そーだよ。まだ他にもあるけどね。とりあえず、見せたいのはこれくらい」
「よし。じゃあ、食材を買いに行こうか。キノコもね」
君と肩を並べて部屋を後にする僕達を、かわいいぬいぐるみとサンダルとライトが、温かく見守っていた。
ここが僕らの、Home Sweet Home。
こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
