3つのお題に空想のひらめきを
🐾お題②:「月うさぎのパン屋」
私、月うさぎのグローシーと申します。
この度、あそこに浮かんでいる、私達の故郷のお月様にて、天然酵母のパン屋を開くことになりました。
ええ、このお店の姉妹店です。お見知りおきを。
昨今は、月に立ち寄ってくれる宇宙航行船もめっきり減りましてね。
そりゃまあ、いくつも穴ぼこがあるだけの星、なんて言われてちゃ、皆さんの興味も失せてしまいますよね。
そこでね、私が一肌脱いで……いやいや、皮を剥いだりしませんよ。
これは地球人の言葉で、誰かのために頑張ってあげるって意味です。
えっ?誰のためかって?
ほら、見上げてくださいよ。
月にはね、本当の月うさぎがいるんですよ。
いや、私達もそうですが、私の仲間はね、住みやすさを求めて、皆この地球に移住してきてますからね。
もう誰も残っていません。
だけど、こうして見上げると、何となく見えませんか?
月の兎。よく、餅をついているなんて言われますね。
でもあれね、実はパンをこねてるうさぎなんですよ。
月うさぎのパン屋が言うんだから間違いない。
ええ、この看板に描かれてるのも彼です。
彼はね、私達の故郷、お月様を今も守ってくれているんですよ、たった一人で。
ええ、確かにあの月兎は空想の産物なんですが、でもあのシルエットがあるおかげで、地球人は月を見上げ、畏怖の念を持って祈りを捧げてくれる。
神々しい太陽の光を地球の裏側で受けて、薄ぼんやりと浮かんでいる我が故郷ですけどね、彼のおかげで、その神秘性を保ってくれているんです。
ですから、恩返しをしたくてね。
もう少し、お月様の魅力をね、いろんな星の人達に伝えたいんですよ。
この店のパンは、ありがたいことに地球人にも好評ですからね。
きっとお月様で開店すれば、たくさんの異星人が買いに来てくれるんじゃないかと。
どうですか?
ウチの店で働きたいと言うのでこうして来てもらいましたが、新しく出す月の店で働いてみませんか?
あなたはまだ若いから、月で暮らしたことはないんでしょうね。
いくつも穴ぼこがあるだけの星ですが、見てくださいよ、こうして見ると、夜空に浮かぶ魅惑的な星だと思いませんか?
ああ、月への移動は、私達の足ならひとっ飛びですよ。
だって、私達はあの星の住人だったんですから。
あなたにだってその力はある。
いや……あの月兎のおかげかもしれませんね。
本当は、誰もいなくなってしまった星で一人、昔のように住人が戻ってきてくれるのを待っているのかもしれない。
あなたのお店がたくさんの人達を月に呼んでくれたら、きっと彼の寂しさは癒されるんだと思います。
それでは、グローシーベーカリー、月出店の第一号として、そちらをお願いしてもよろしいでしょうか?
ああ、いやいや、パンの製造工程など知らなくても大丈夫です。
さっき言ったでしょ。
あの月兎が実はパンをこねてるって。
そーゆーことです。
あなたは売るだけで大丈夫。
あれは空想の産物なんじゃないかって……ああ、それは地球人にとって、です。
月に行ってみたら分かりますよ。
彼によろしく言っといてください。

こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
