見出し画像

アマノ文筆クラブ 『ハラハラするんですけど』

次女がハラハラさせる。
女子大生で、夏休みに入った今はインターンシップに通ってる。
今朝も着慣れないフォーマルを身に付けて、だけど足もとはスニーカーで、電車の時間ギリギリに家を出ていく。
そして数分後、彼女からのLINE。
「途中の道で転んだ。パンツスーツが破けたけど、誰も気付かないよね、こんなの」
知らんって。見えないんだから。
「まあいいや。どーしよーもないからこのまま行く」
そりゃそーだ。どーしよーもない。
まあ、今日だけ会うような人達だし、バレたらバレたでいいんじゃない?
そんな感じ。

帰宅して第一声。
「インターンシップ、楽しかった。友達も出来たんだ。一緒にプレゼンした」
帰りの電車も一緒だったらしいが、連絡先も交換していないと言う。
それは……もう二度と会えないんじゃないかな。
その会社に就職が決まって再会できたら奇跡だな。
まあ、今日仲良くやれて、楽しかったんならいいか……って彼女の膝を見てみたら、まるでダメージデニムのような破れ方。
しかも、左右両方。
「なんでこんな激しく破けてんの?電車ギリギリで走ったんでしょ。だから余裕持って出ろって言ったのに」
そう呆れてみせると、
「走ってないよ。履き慣れてないスニーカーのせい」
と頑なに言い張る。
ハイヒールとかなら分かるが、スニーカーを履き慣れてないって。
しかも普通に歩いてて転んでも、こんなに引きずったようには破けんだろ。
めっちゃ焦ってんじゃん。
そして膝は傷だらけで内出血もひどい。
これが、フォーマル着て就活してる女性の足か?
転んだ時、周りに人がいて恥ずかしくて、思わず、
「転んだ!」と叫んだと言う。
いや……それが恥ずかし過ぎるだろ。
勘弁してくれよ。

「そんでね、帰り道にね、ナンパされちゃった」
突然、新情報をぶっ込んでくる。
「ナンパ?どこで?」
「ウチのマンションのすぐ近くで。声かけられてマンションのロビーまでついてきた」
「マジかよ。なんて言われたの?」
「最初は、後ろから見ててスタイルが気に入ったんで、LINE交換してくれませんか?って。それはちょっとって断ったら、じゃあホテル行きませんか?って。それは嫌ですって断ったら、じゃあ10万円払うから胸揉ませてもらえませんか?って」

……娘よ、それは、決してナンパではない。
変質者に出会ったと言うべきだ。

ホント、そんな娘の話を聞いてると、めっちゃハラハラするんですけど。
初日でパンツスーツをダメにした。
変質者はマンションのロビーまで来て、帰ってきた住人に見られてやっと退散したという。
踏んだり蹴ったりじゃないか。
それでも娘は、今日一日楽しかったと言う。
新しい出会いにワクワクして、触れたことのない世界を経験できたことが。
前向きですな。
親は気が気じゃないけど。

これ、娘には読ませられないが、実話なので、日記の代わりにココに残しておこう。
まあ、これからも頑張ってくれ。

こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。

いいなと思ったら応援しよう!