アマノ文筆クラブ 『どうにもとまらない』
目覚めてまず、トイレに行った。
用を足してトイレを出ようとしたら、扉が開かない。
鍵はかけてないのに。
力を込めたら、少しだけ開いた。
なんだか、扉の外側に何かが置いてあるみたいだ。
それが重しになっている。
何とか、体が通り抜けられるほどの隙間を空けて、外に出てみたら、扉の前に巨体のゴリラが。
どっしりと座り込んで、鼻をほじっている。
「おい、人の家のトイレの前で何やってんだよ」
思わず普通に文句を言ってしまう。
すると、
「あんたの家のトイレの前で鼻をほじっちゃいけない理由でもあんのか?」
と、ゴリラが返す。
「トイレの扉が開かないだろ。イイ迷惑だよ」
至極真っ当なクレームだ。
しかし、
「開いたじゃないか。トイレから出られただろ?」
と、ゴリラが返す。
「すごく大変だったよ。あんた重いから」
まあ、開けられないほどではなかったが。
「ゴリラが重いのは当たり前だ。この胸筋を見ろよ」
いや、そーゆー問題じゃない。
今は何故、ここにゴリラがいるのか?だ。
「君は……どこかの動物園から逃げてきたのか?」
まあ、逃げてきたとしても、こんなところにはいないはずだが。
「どうして俺が、動物園育ちだと思うんだ?」
……そうだ。動物園のゴリラは喋らない。
いや、そもそもゴリラは喋らないんだ。
そこからしてもうおかしい。
これは……もしかして、夢?
目覚めてすぐ、その匂いに気付いた。
香ばしく、食欲をそそられる匂い。
ん?さっきのゴリラは夢だったのか?
やっぱりそうか。ゴリラが喋るわけがない。
「おう、やっと起きたか。トウモロコシ焼けたぞ。食うか?」
ダイニングテーブルの上にカセットコンロ。
そこでトウモロコシを焼いている、ゴリラ。
んー、なんで?
なんでゴリラ?
ゴリラってトウモロコシ食う?
……まあ、食うか。
でも、ダイニングテーブルの上でカセットコンロは使わんだろ。
いやそもそも、人の家になんで上がり込んでるわけ?
いったいどこの動物園から逃げ出して……いや、動物園育ちとは限らないよな。
「醤油かける?屋台風も美味いよな。茹でるのもいいけど、やっぱり焼きトウモロコシしか勝たん」
俺は起き上がり、メガネをかける。
ゴリラのモッサリ感がさらに増したように感じる。
彼が気を悪くしそうなんで口には出さないが。
「なあ、ゴリラの夢って、どーゆー時に見るんだろ?」
まったく別の質問を投げる。
「夢?ゴリラの?さあ……会いたい時とかじゃないの?」
「会いたい……ゴリラに?」
「いや知らんけど……で、トウモロコシ食う?」
目覚めると、荒れ果てた廃墟の映画館。
映画の途中で眠ってしまったのか……でも、この映画館は営業してるようには見えない。
スクリーンには何も映っておらず、観客席には誰一人として……いや、隣の席に座ってる奴がいた。
「イイ映画だったな。久し振りに泣きそうになったよ」
……ゴリラが?映画観て泣くの?
「てゆーか、映画の記憶がないよ。何の映画やってたの?」
俺の質問に、
「映画館来て映画観ないってどーゆー了見だよ」
至極真っ当に返される。
「この映画館、本当に営業してんの?廃墟みたいだけど」
「廃墟で映画流しちゃいけない理由でもあんの?」
また、メンドくさいこと言ってくる。
最初のゴリラと同じゴリラなのか?
……最初って何だ?
俺はいつになったら目覚めるんだろう?
ずっとゴリラと一緒にいないか?
なんかそんな気がする。
「難しいこと考えんなよ。眠ってる時くらい、自由でいたらどうだ?」
ゴリラが、何かを諭してくる。
このゴリラは、俺の人生を好転させるために誰かに遣わされた天使なのか?
そう思って見てみると……ゴリラはゴリラだった。
夢が、どうにもとまらない。
もしかしたら、夢じゃないのかも。
何か……VRゴーグルを付けて見せられてる映像だとか。
でもなぜゴリラ?
今度のゴリラは、弁当屋の店員になっていて、客である俺にやたらと唐揚げ弁当を勧めてきた。
なんかもう……唐揚げ弁当じゃなくて、ゴーゴーカレーが食べたい気分だ。
あと、焼きトウモロコシも。
こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
