3つのお題に空想のひらめきを
🍊第36回 3つのお題
🎈お題①:「しゃべる石臼」
🐾お題②:「雪女が落とした手紙」
⏳お題③:「鶴が返しそびれた恩」
本当はね、あなたと添い遂げたかった。
あの一夜だけでは、あなたへの恩は返しきれなかった。
一生懸命はたを織ったけど、あれだけじゃ私の心は晴れなかった。
あなたが、罠にかかった私を助けてくれたあの瞬間、私は恋に落ちたのかもしれません。
それは私が、人の姿に変化することの出来る鶴であったためか定かではありませんが、あなたという人間を愛してしまったことに違いはありません。
あの機織りに自分の羽を費やしたためか、私の風貌はずいぶんと変わってしまいました。
だから、あの日の再会にあなたが気付かなかったのも無理はありません。
あの雪山の小屋。吹雪の夜。
あなただけを助けた私。
分かりますか?
私はもう、鶴の化身ではなくなっていましたが、あなたを想う気持ちは何も変わっていませんでした。
あなたとは、ふたつの約束をしましたね。
鶴の時は、「決して機織りしてる部屋を覗かないで」
雪の夜は、「今夜のことを誰にも話してはならない」
ひとつめは守られませんでした。
あなたは好奇心に負けてしまったのです。
だから、あなたのそばにい続けることが出来なくなってしまいました。
ふたつめの約束を、あなたは守ってくれるでしょうか。
もうすぐ、あなたのおそばに行きます。
お雪という女を装って、あなたに娶ってもらうべく、自然にあなたに近づくつもりです。
今度こそ、普通の人間として出会い、あなたとの恋を成就させます。
「この手紙は、私の決意の証。あなたに読ませることはない。密かにしたためて、いつも懐の奥に忍ばせておこうと思っています。……とゆーね、これがさ、俺の知り合いの雪女が落とした手紙。俺も読むつもりはなかったんだけどさー、動けない俺の目の前で落とすもんだからさー、読まずにはいられないよね。……で、どう?これ、あんたのことだと思うんだけどさ、娶るつもりはあんの?あんたに読ませるつもりはないって書いてあるけど、いやー、俺が気になるじゃない?事前に聞いてみたくてさー、かなり時間をかけてここまで来ちゃったよ。どうなの?あんたの気持ちを教えてよ」
石臼がうるさい。
見た目によらず喋り過ぎだ。
ドンと構えてればいいのに。
「彼女の手の内を全部バラしやがって。どんな顔して出会えばいいんだよ、まったく。でもさ、ホント綺麗な人なんだよ。鶴ん時も覗かなきゃ良かったって凄く後悔した。あのまま夫婦になれれば良かったのにって。……だけど、雪女の時にさ、俺、友達殺されてんだよ。これ、看過出来る?俺の一番仲の良かった茂作だぜ。なんなら、茂作の敵討ちだって考えてたくらいだ。その手紙の内容はさ、事前に知れて良かったけど、かなり複雑だよ」
「あーあ、言っちゃったね。誰にも話すなって言われたのに。あんたは試されてたんだよ。約束を守る男かどーか。まあ、あんたも彼女への想いは微妙なようだし、これで良かったのかな。たぶん今夜辺り、彼女があんたんとこに来ると思うから、覚悟しときなよ」
そこまで言うと、石臼は黙った。
ただの石の塊になった。
俺もまるで、体が凍りついたかのように身動きが取れない。
真冬がやって来る。
真夏が恋しい。
こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
