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せりふ三題噺 (A Hard Day's Night)



■セリフ
「なんで今日なんだろうね」
■三題
・カイロ
・確定申告
・始発


「こういうのはカイロで温めてあげるとラクになりますよ。」

馴染みのマッサージ店でグリグリと首筋をほぐされながら言われている。

北斗の拳のアミバの実験シーンが頭の中で再生されていた。
仕事だが楽しそうでもある施術。
カイロ療法も試してみてねと2袋渡された。

さて、明日の仕事に備えて今日は軽く一杯やったら寝るか…。
帰宅途中の車内で考えていたら連絡が来た。
馴染みの飲み屋のマスターからだ。

「あのさ…もう飲んでた?」

ん?トーンが低いなあ?

「いや、マッサージ受けた帰り道なんで飲んではいないですけど。」

「実はさ…」

移転することになるだろうって話を聞いていたが、ビルの大家の都合で退去に法的な圧力がかかり退去の作業がハイピッチになったそうで。
あまりの物の多さ、重さ、日程のキツさ、
全てが過酷で限界を超えた手伝いの友人がギブアップしてしまったそうだ。

貸し倉庫に物を運ぶための車も同時にいなくなってるワケで…。

進退極まっての電話であった。
身体も精神も極まってるようだが…。

まあ、いつもなら自宅で飲んでる時間帯だったがたまたまのタイミング。
車に乗っていたしすぐに店へ向かった。

「なんで今日なんだろうね…」

タイミングの妙を感じながらちょっと楽しくなってきていた。
明日への不安もあるがこの時点で腹をくくっていたのかもしれない。

コインパーキングへ車を停めて酔客で溢れる街を足早に進む。

店ではある程度の荷物は運び出されていたが、長年に渡って集めた飾り物やグッズ類がまだまだ残っていた。
時々知人が営むリサイクルショップから頼まれて、終活やら遺品整理を手伝っているので片付けのノウハウはある。

それだけに手強い戦いになりそうなことは肌で感じた。

「ごめんねぇ、手伝ってくれてた人が腰やっちゃって…。
やっぱりレーザーディスクを詰めたダンボール箱が重すぎで量がハンパないし…」

壁一面にあったレーザーディスクは全部なかった。
80年代の物が中心だったが、DVD化されていないものや当時はOKでも現在はNGなもの、
貴重な映像を酒と一緒に沢山摂取したな。
LPレコードと同じ大きさの素敵なジャケットとディスクの大きさは若い子に新鮮で、その反応も楽しむのが店の味だった。

洋画、アニメ、特撮、ライブ映像、
あまり出回っていないプロモーション映像
王道のミュージシャンの若い頃
すでに亡くなっているミュージシャン
この店で知ったことが多々ある。

「さんざん世話になったんだし恩は返しますよ!
さぁ、やらなきゃいけないし、
やらなきゃ終わらないんでしょ?」

「ありがとねえ…、もうさ何日もロクに寝てなくて片付けもなかなか進まなくて…。」

こういう時って近しい友人や身内、自分は思い出や事情を知りすぎていてなかなか進まないことを知っている。

あまり深くない知り合いぐらいが感情を入れすぎず片付けられるので、向いてるのを経験していた。
ただしザツに扱ってはいけない。

使うもの、使わないもの、お伺いを立てる。
運んで良いものはどんどんクルマに積む。
たまたま車内に積んでいたキャンプ場などで使う折り畳みの荷運びカートが物凄く活躍してくれた。
台車と違って箱状になっているので物が溢れないのだ。
タイミングの妙をまた感じた。

何回も貸し倉庫へ往復して物が減ってきた。
捨てていいって言われた古い確定申告の書類なんかは一応まとめて保管することにした。
疲れて冷静な判断ができてないマスター、
税金等にはからっきし疎い自分、
どちらもアテにならない。

ZIGGYのグロリアの歌詞にあったかな…
『アテにならない明日を占えば〜』

いかん、自分も疲れてきてるな。

しかしながらもう家で寝る時間はない。
出勤時間ギリギリまで作業するしかない。
フン、飲屋街からシラフでご出勤か。
なかなか経験できるこっちゃないな。

マスターの自宅に私物を運ぶ頃は明るくなりかけていた。

「ああ、始発の地下鉄で帰宅してたから車に乗せてもらって朝日を見るなんてのはいつぶりだろうなぁ…。」

自分達が飲み明かした後に店を掃除して帰宅するのはそんな感じだったのか。
あまり想像したことがなかった。

一眠りするのかと思ったら店に戻ってまた作業すると。
店に送り届けて、クルマに積めるだけの不用品やお礼がわりにもらった懐かしいグッズなんかを積み、いつもより早い時間に出勤した。
一睡もしていないが気分は高揚していた。

なんとか1日の仕事をこなし自宅に到着。

バイト代替わりにせしめたウイスキーのボトルで一杯やることにしていた。

朝まで動けたのはマッサージを受けていたおかげだと思うが、また行かねばならぬだろう。
マッサージ師の仕事に報いるためにもボトルをプレゼントするからと多めに確保してきた。

しかしまぁ…

「なんで今日だったんだろうね。」

すでに今日ではなかったが、長い1日が終わろうとしていた。

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ドライブイン ニューアジト 天井裏から愛をこめて! ナイタラダメヨ  (元ネタはアンジーです、知らない方すみません…。)