東京都庭園美術館 鉄とガラスと光と
今年最後のお出かけ(という名の現実逃避)は東京都庭園美術館へ。
東京都庭園美術館では現在、「そこに光が降りてくる 青木野枝 / 三嶋りつ惠」が開催されています。
展覧会は時間予約制で、1時間ごとに入場を区切っています。入口から少し歩くと本館が見えてきます。

東京都庭園美術館の本館は、昭和8年に朝香宮邸として建てられました。
宮家の一つである朝香宮は、久邇宮朝彦親王の第8王子である鳩彦王(やすひこおう)が創設しました。鳩彦王は自邸を建てるにあたり、フランス留学中に魅せられたアール・デコ様式を積極的に取り入れ、建築には当時の一流のデザイナーや技術者が関わったそうです。東京都庭園美術館として生まれ変わった現在も、その美しい意匠で人々を魅了し続けています。
東京都庭園美術館は前に一度だけ行ったことがあります。と言っても35年くらい前、私はまだ幼稚園児でした。
美術好きの母に連れられ、幼稚園で一番仲良しだったTちゃんと3人で行ったのでした。なんとなーくうっすら記憶に残るのはオレンジ色の壁。
きっと母に「静かにしてね」と言われたのだと思いますが、Tちゃんとその壁の前に立って「シーッ」と人差し指を口の前に立て、クスクス笑っていたのを覚えています。騒がしい子供たちを連れて行った母は気を遣って大変だったと思います。
さて、「そこに光が降りてくる 青木野枝 / 三嶋りつ惠」です。
朝香宮邸でつむぐ鉄とガラスの創造
降り注ぐ太陽の光、おだやかな温もりを感じさせる日だまり、暗闇の中に差し込む月明かり…
私たちは生きている間に、さまざまな光との邂逅を重ねています。
本展は、現代美術の第一線で活躍を続ける二人の作家、青木野枝と三嶋りつ惠が、当館の各所に作品を配置し、新たな視点でアール・デコの装飾空間を照らし出す企画です。
青木野枝さんは鉄を素材として、抽象彫刻を作り続けてきた彫刻家だそう。三嶋りつ惠さんはヴェネツィアのムラーノ島で現地の職人とのコラボレーションによりガラス作品を作り続けてきた作家で、京都にも住まいがあるそうです。
旧朝香宮邸も様々な場所にガラスと鉄が使われています。
お二人の作品がそれらと共鳴し、新たな風景が生まれる、そんな展覧会でした。
青木さん、三嶋さんの作品と、旧朝香宮邸の装飾、いいなと思ったものを私が辿った順番に載せていこうと思います。
三嶋さん《宇宙の雫》
最初から部屋の装飾として存在していたかのように、しっくりとこの空間になじんでいました。

次の部屋にあったこのオレンジ色の壁、私が幼稚園児の時に見た壁かもしれません。何かの石なのか、柿のような色でした。この色好きだなぁ。

次の大客室の扉の上部にはレイモン・シュブという鉄工芸家によるタンパン(tympan フランス語 扉の上の半円形の部分)が。下のガラスの部分はマックス・アングラン作のエッチング・ガラス・プレート。不思議な図柄です。

大客室の上には美しいシャンデリア。
ルネ・ラリックが手がけました。

大食堂には青木さんの《ふりそそぐもの/ 朝香宮邸ーⅡ》

鉄の板からバーナーでくり抜いた丸い鉄を溶接でつなぎ合わせています。
壁には変わった色の大理石が使われていました。係員の方に伺ったところ、イタリア産の大理石で、現在は入手できない貴重なものだそうです。

もしかしたら昔見たオレンジの壁はこっちの壁?
1階大広間、三嶋さん《光の海》

いろんな形のガラスがあって、それぞれがそれぞれの形で光を受け止め、周りの光景をとかし込み、見る側の位置によっても見え方がガラリと変わったり。

2階へ上がる階段の部分の意匠。
この黒い大理石も大変貴重なものだそうです。

2階広間、三嶋さん《光の場》
22000個のガラスビーズが使われているそう!

青木さんの《ふりそそぐもの/ 朝香宮邸ーⅤ》
この積み上げられているものは石鹸です。

光がふりそそぐベランダの床には市松模様のタイル。この白と黒の大理石もイタリア産です。

ベランダにあった三嶋さんの作品。
光を受け止めた螺旋状のガラスが最大限にきらきら。
私の作品の本当のコンセプトはガラスではなく、光なのです。

三嶋さんは完成した作品のスケッチを残しているそう。
重量も書いてあって、30kgを超えるものも。

この後の展示に実際の制作風景の映像を見られるところがありましたが、職人達があつあつの重そうなガラスを手早く回し、形を作っていました。
青木さんのスケッチブック。膨大な量のスケッチでした。

展覧会に行くと創作をしている人のスケッチブックやノートが展示されていることがありますが、それを見るのが好きです。旅行記を読んでいる時の感覚と似ている気がします。
三嶋さんの《制作をめぐる資料》
いろいろな形のガラスが並んでいるとそれだけでワクワクします。

これは北側ベランダにあったガラス作品です。北側のベランダは、主に暑い夏に涼む場所だったそうです。

北側ベランダの壁と床。
涼しげな組み合わせが素敵です。

北側ベランダを出たところの廊下の壁とラジエーター・カバー。
館内にはラジエーター・カバーがいくつもありましたが、どれもただのカバーではなく、花や魚など様々なデザインが施されていました。ここでは江戸小紋の「青海波(せいがいは)」が使われています。アール・デコにも日本の江戸小紋の図柄が取り入れられていました。繰り返しの図柄がアール・デコの様式に合っていたようです。

光が降り注ぐ3階のウインターガーデン。
ウインターガーデンは温室として使われていたそうで、水道や排水溝が設置されていました。
ウインターガーデンのテーマは「植物」。
青木さんの《ふりそそぐもの/ 朝香宮邸ーⅧ》
上へ伸びていくモチーフが、植物の成長や植物が吸い上げる水をイメージさせます。鉄は重量物ですが、泡のような軽やかさを感じました。

三嶋さんの《ヘリオス》
植物たちの成長の糧となる太陽の光。それを司るのがヘリオス、太陽神です。どっしりと立っている姿でしょうか。

途中の階段にあった丸い窓。

本館から新館への渡り廊下。
光がガラスを通るとこんな模様に。

実際は平らです。
新館前にはエドゥアール・サンド作《横たわる豹》
エドゥアール・サンドは1881年スイス生まれの彫刻家で、多くの動物彫刻を残したそう。東京都庭園美術館でも1995年の暮れからエドゥアール・サンド彫刻展が開催されました。

新館には青木さんの《ふりそそぐものー赤》
広い展示室いっぱいに広がる作品です。

壁と繋がっている部分はこの場で溶接作業してつなげていったのかなと思って係員の方に伺ったのですが、わかりませんとのこと。
どうやったのか気になるー!

正面玄関にあるのはルネ・ラリックが手がけたガラスレリーフ扉。夜に部屋の明かりを透かして見てみたいです。

私が行ったのはよく晴れた冬の日の午前でした。
天気や時間帯が変わると作品の見え方がまた変わっていたと思います。
窓から差し込む光と作品の相互作用でいろんな表情に出合えそうな展覧会でした。雪の日とか月明かりでも見てみたいです。
作品はもちろんですが、建築や室内装飾も見どころです。隅から隅までじっくり見たらいろいろな発見がありそう!
東京都庭園美術館「そこに光が降りてくる 青木野枝 / 三嶋りつ惠」は来年の2月16日まで開催されています。

青木野枝さんのホームページ
三嶋りつ惠さんの紹介ページ
このあと、隣接する国立科学博物館附属自然教育園に行きました。長くなってしまうので、その時の様子は次の記事にしたいと思います。
