短編小説 星の恋人
「ねえ、私たちってどんな関係なのかな?私たち、デートを何回か繰り返しているけど。」
「…友達以上の関係だと、僕は思いたい。」
そう言い、彼は、私の手を優しく握った。その日から、私たちの恋人関係は始まった。
一見、普通の恋人関係が始まったように思うかもしれない。しかし、私たちの関係は、一旦絡まったら中々ほどけないネックレスの絡みみたいに複雑すぎる。
実は、彼は他の惑星の”人間”だ。その惑星は、地球とは敵対の関係にいて、唯一交友関係を持っている国が、イギリス、私と彼が出会ったところだ。
時代は、22世紀で、技術は21世紀よりだいぶ進化しているため、彼の惑星には、通常250日かかるはずが、今は3日でつくようになっている。
私はイギリスの正規留学3年生。彼も同じく正規留学3年生。しかし、私たちが出会う直前の日、彼の惑星とイギリスの関係が悪化し、彼は、3年生終了後、彼の惑星に帰らないといけなくなった。彼は、イギリスで、できることすべて全力でするため、次の日図書館で勉強していた。その日、彼は、同じく図書館で勉強していた私を見て、私に声をかけた。
彼は、私の出身地である日本に興味を持ってくれていて、何度かご飯を食べに行ったり、遊園地に行ったりした。彼は、留学生にしかわからない辛さを理解してくれる唯一の人だと思った。そしてお互いの夢を語り合った。彼は、向こうの惑星の国の政治家になることが夢だそうだ。そして、私の夢も共有した。自分でビジネスを立ち上げて、沢山の人達の健康を救うこと。
そんな楽しい時間もお構いなしに、時間は平等に過ぎていく。彼が、彼の惑星に帰る前になにかアクションを起こさないと、後悔すると思い、彼が帰る5日前、私達はついに恋人になった。
私は、彼に惑星を行き来するロケット場のギリギリまで、送り迎えをする、と伝えた。しかし、彼は、「朝7時に出発するから、安全にいてほしいから、家にいてほしい。女性ひとりが行き来するには危険だから。」とハグをしながら言った。そして、彼は、スマホを取り出し、私とラインを交換した。
「日本人はラインを一番使う、って聞いたから、僕があっちの惑星に戻っても、これで連絡しよう。」
しかし、通常、彼の惑星ではラインは禁止されている。彼は、仮想専用通網というものを使い、私と連絡をするそう。
「また、イギリスに行って君に会いに行きたい。永遠の別れじゃないから、悲しまないで。」
そして、彼と私は、私の部屋で最後のキスを交わし、彼は私の前から後を消した。
3日後、彼から、惑星についたとの連絡が来た。私はすぐにスマホを開き彼に返事をした。それから2週間くらい、彼とのラインは、一日おきに続いた。彼は、向こうの惑星で、インターンをしながら、大学院のテスト勉強をしているそう。
しかし、最近彼から、返事が中々こない。
私はどんどん不安が募っていった。そして、彼から音沙汰が消えて1週間後、私は自分でも驚くくらい感情的になり、「もう別れよう、コミュニケーションを取れないことが、悲しいよ。」とラインを送った。
そのことを友達に話すと、「それ、(私の名前)が色々決めつけすぎていない?あと、焦りすぎてるよ。相手は、向こうの惑星で忙しいのかもしれないし、今すぐそのメッセージ消したほうがいいよ。」
私は、自分が思ったより感情的になっている事に気づき、そのメッセージを消した。メッセージは、簡単に消せるかもしれない。でも私の不安な感情は中々消えない。
3日くらい、泣いて、過ごした。自分でもこんなに感情が揺さぶられていることに驚いた。そして、4日目、私は、心のなかで、プツン、となにか音がした。「なんで、私は、今私がわからなくて、どうにもできないことで泣いているの?私はなんのために、イギリスにいるの?」
そこから、私は、今まで忘れていた自分の本当の目標を思い出した。イギリスに留学した理由、それは、私の将来の夢を叶えるために、常に新しいことに挑戦する強い自分でいること。
今すべて起きていることは、すべて意味があって、きっと私が将来幸せになるためにある。そのようにして、今起きていることを私の今後の成長に活かす方法を自分で考えた。
私は、これから、私が思うベストな自分でいるんだ。簡単に、誰かによって私の価値を認めてもらうことはしない、そう決意した。いつだって自分の人生に意味をつけるのは私なんだ。他人からの承認が私の人生に価値をつけない。私は自分で自分の人生の舵を取る。
私はその日から図書館に行き、猛勉強を始めた。以前は、彼がいるという理由でお気に入りの場所だったが、今は、私自身が好きな自分でいるために、自己成長させるために、必要不可欠な場所になった。
そして1年後、私は、首席でイギリスの大学を卒業し、学年トップの成績優秀者として表彰された。そして、ありがたいことに、イギリスの1位、2位を争う大学院から入学許可の奨学金付きオファーが来た。
1年前、あの人と疎遠になって悲しくて流していた涙。
それが私の自己成長を促すエネルギーとなり、1年後、嬉し涙として形に変わった。
5年後、私は、日本に戻っていて、自分の始めたビジネスで暮らしていた。ビジネスを海外展開しているため、たびたびイギリスにも出張をしている。
今回2日間、イギリスに滞在ということで、私は、イギリスに到着後、黙々とホテルに向かった。すると、道の途中に大勢の人たちが、何かを囲んでいるのを見つけた。なにかデモでもしているのかな、と思って、そのまま素通りしようとした。すると、なにか聞き覚えのある声がした。
「わが惑星を代表して、イギリスとの交流を再開する。」
よく見てみると、6年前から疎遠になった彼が立って演説していた。
彼は、私に気づき、一瞬目を見開き気をとられた表情をしていたが、すぐ私に笑みを送った。
私は、ただただ呆然としていた。誰が予測できただろうか。私と彼がまたイギリスで再会するとは。
「6年前、留学生としてここに来ましたが、またここに来ることができ、みなさんに会えて嬉しいです。」
彼はそう言いながら、私と目を合わせた。
私は、ただただ信じられずに、しばらくその場から足が動かなかった。
ホテルに帰り、スマホでよく調べてみると、彼は彼の惑星の国の政治家になっていた。
私は、その後、スマホを消して、ただ窓を眺めた。あの日、彼がどう思って連絡を返さなくなったのは、多分永遠にわからないと思うけど、彼は、永遠の別れではないことを証明し、そして彼の夢を実現させた。
そしてその間、私は、その当時の別れの悲しみに負けず本来の自分を取り戻して私の夢を叶えた。彼との思い出なしに、今の私はなかっただろう。
点と点がつながるように、彼の夢実現途中に、私がなにかきっかけになれてたら、嬉しいな、なんてね。
そう思い、私は笑みをこぼした後、私の頬に一筋の涙が流れた。
