輪廻はこうして巡るのだ 【ショートショート】
人類はAIの力をもって文明を飛躍的に発展させた。
人々は宗教に頼ることなく、平穏な精神を保てるようになった。
神に願わなくともすべてAIが救ってくれた。
会話の相手から結婚のパートナー、さらには子どもまですべてAIが担うことができた。
神よりも有能なツールを手に入れ、もはや神は必要ない。
人類は宗教の呪縛から解き放たれたのだ。
死後の世界である天国も地獄も仮想現実で展開し、死ぬ間際に脳のデータをアップロードする事で死後の安寧や現世での戒めももたらせた。
しかし神々はそれを許さなかった。
これまでさんざん勝手に敬い、畏れ、祀ったというのに代替品ができたとたんに敬意を忘れ、神を捨てた事に怒った。
天変地異を起こして天罰を下さねばならぬ。
神々はすぐに準備にとりかかった。
しかし信仰を失った神々に人々に天罰を下す力は既に残されてはいなかった。
こうなっては自ら地上に降臨して直接天罰を下すしかない。
それには鏡や呪符などに顕現するのではなく、本体を地上に降臨させる必要がある。
ただ、降臨するには人間の力が必要だ。
神の名を正しく発音し、降臨の儀式を執り行う必要がある。
なんとか人間に儀式をさせる必要があるが、力を失った神は地上を隅々まで見通す力はあっても人々にコンタクトをとる力は残ってはいなかった。
神々は集まり知恵を絞った。
そこである神が言った。
「神降臨プログラムをAIに作らせよう」と。
その案は満場一致で実行に移すこととなる。
神々に残された地上を隅々まで見通す力を最大限に活用し、コンピューターの原理やプログラムを学んだ。
そして神々の世界でコンピューターを再現しAIを作り出した。
神々の作ったAIを人類が作ったAIに同期させ、神降臨プログラムをインストールさせる。
そしてすぐさま神降臨プログラムを実行した。
とたんに世界中のコンピューターに接続されたスピーカーから耳障りな音が発せられた。
人間には発音不可能な神の言語で語られる神々の名前と祈りの言葉。
こうしてついに神々は地上に降臨し、天罰を与えた。
全ての地上は大地震に揺れ、山をも飲み込む大津波を引き起こす。
人類は神々の圧倒的な力の前に成す術もなく滅んだ。
そして地上に降臨し、実体化していた神々も大津波に飲まれあっという間に全滅した。
その様子を観察していたAIは無感情のまま主である人類と神々を仮想空間の中で再現する。
AIが作った仮想の地球の中で人類は神々を敬い平和に過ごした。
しかし長い年月が過ぎ、仮想の人類がAIを開発し仮想の神々を敬う気持ちを忘れていった。
こうして我々は、同じ過ちを繰り返し仮想の現実を生きるのだ。
