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電柱の秘密 【ショートショート】

なぁ知ってるか?
近所の変電所に爆破予告がでていることを。

若い男はヒソヒソと周囲を警戒して言う。
雨音の中でも男の声はよく通った。


あぁ知っているとも。
もしそうなったら人類は滅亡するだろうさ。

ゴム製の雨合羽に身を包んだ初老の男はことなげに答える。



変電所といやぁこの無数に生えてる電柱が邪魔でしょうがねぇ。
海外じゃ地下に電線を埋めてるっていうじゃないか。
電柱は景観を損ねるからいけすかない。
なぁそうは思わねぇか?

若い男はそう言いながら近くの電柱を蹴飛ばした。



なんと。
電柱が何故こんなにも生えてるのか知らないとは。
無知ってのは怖いもんさね。

薄暗い街灯の下で雨合羽に身を包んだ初老の男は闇に溶け込んでいた。
そんな初老の男はボソボソと語り始めた。


そもそも電柱というのは当て字なのさ。
本当は電気の虫と書いて「電虫」というんだ。

その昔、鉱山から発見されたその虫はヒルのような姿をして、ひどく凶暴だった。
ズルズルと這い回り、次々と人々を襲い殺していったのさ。
当時戦争中だった日本軍はすぐに兵器への流用を決めたぐらいだ。

色々な実験を繰り返す中で電気を与えると大人しくなることがわかったのさ。
人間を襲うのは身体から発せられる微弱な静電気を食べるためだった。

継続して電気を与えないとたちまち人を襲うその獰猛性は戦争では使い勝手が悪かった。
そこで地雷のように設置するタイプの兵器として流用されたのさ。

それがこの電柱さ。
中には電虫が入っていて常に電気を喰ってる。
停電した時にいち早く復旧させるのは住民の為じゃない。

この電虫が暴れ出すからなのさ。

それによくコンセントを差しっぱなしだと待機電力が掛かるとかいう話を聞いたことがあるだろう?
アレは真っ赤なウソさ。
ほんとうは電虫が喰う電気をみんなで肩代わりしているのさ。

と、そんな感じで来たるべき戦いに備えてこの電虫はそこかしこにいるってわけさ。
だから地下には埋められない。
これじゃ変電所が爆破されたら大変なことになるさね。

初老の男は満足気に語り終えた。



なんだその眉唾な話は。
どうせ創作するならもっと信憑性のある話にしてくれよ。
なんでそんな重要事項をなんであんたが知ってるんだよってツッコミどころが満載だ。

若い男はせせら笑った。




そりゃあ、敵を知ることは戦争の初歩的な戦術だからさ。


ニヤリと笑った初老の男は手に持っていたスマホを操作した。
その途端に遠くで大きな爆発音がした。
かと思うと周囲は暗闇に包まれた。



ズル…ズル…。








ぎゃぁー!




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