ハッピーエンド
「はぁついてない」
これは俺の口癖だ。
ことあるごとにこのセリフを口ずさむ。
でも俺は悪くない。
生まれた年が悪いのか
血液型が悪いのか
パーソナルカラーが合ってないのか
なんか星の位置が悪いのか
とにかく俺はついてない。
そんな人生を歩んできた。
まさに筆舌に尽くしがたいが、敢えて言うなら神に見放されているレベルである。
この間もハッピーターンを咥えながら歩いていたら、盛大に転倒して折れたハッピーターンが目に刺さったし。
公園に行けば鳩にハッピーターンをパクられるし。
ハッピーターンを買って袋を開けたら個包装されていないタイプで一気に食べる羽目になるし。
ついていない俺は縁起の良い名前のハッピーターンを好んで食べる。
しかし あのお菓子は全然ハッピーにならない。
アンハッピーアイテムだ。
このままじゃ俺の人生バッドエンドだ。
ハッピーになるには俺を見放した神に直談判するしかない。
そこで初詣だ。
俺は近所の神社へ出向いた。
賽銭は奮発して500円だ。
俺の本気度が神にも伝わるだろう。
指が震える。
俺は500円と一緒にハッピーターンも賽銭箱へ放り込む。
これで俺を見放した憤りも伝わるだろう。
アンハッピーアイテムをくらいやがれ。
柏手を打ち心の中で祈る。
(俺に最高のハッピーエンドを用意してくれッ!)
心の中で10回は叫んだ。
『おまえか賽銭箱に異物を放り込んだ愚か者は』
頭の中に直接声が響く。
きたきたきた!
神様だ。
俺の祈りが通じたんだ。
俺は目を瞑ったまま神様に心の声で語りかける。
(俺はあんたに見放されたことで今まで散々な目に遭ってきた。でもその事であんたを責めるつもりはない。だからせめて俺にハッピーエンドをもたらしてくれ!)
俺は心の中なのに早口でまくし立てた。
『ハッピーエンド?最近は願い事がハイカラでかなわん』
『だが私は神であるからして、なんとなく理解できる』
『本当にそんな願いで良いのか?』
神は俺のハイテンションとは違い 冷静に告げる。
俺は心の中でガッツポーズを決める。
500円も投入した甲斐があった。
それともハッピーターンが決め手になったのか?
俺はどんなハッピーエンドが訪れるのかワクワクしていた。
遂に俺にも幸せの瞬間が…
『では死ぬが良い。神に葬られる程 名誉なことはあるまい。実にハッピーエンドであろう』
神は何でも無い事の様に言う。
(ちょっとまてー!いきなり死ぬってなんだ。物騒な神様だな)
俺は焦って心の声で叫び、神を止める。
『これだからハイカラな願いは…面倒く…だる…』
神との交信が遠くなり聞こえづらくなる。
俺は大声で神を呼び止める。
(おいおい!まだなんにもしてもらってないぞ!ハッピーエンドはどうした)
『まったく面倒な奴だな。次で最後だぞ』
『ではハッピーエンドを授ける』
神との交信が回復したと思ったら一方的に言葉を浴びせられ そのまま途絶えてしまった。
もう何を呼びかけても応答はない。
「ハッピーエンドを授けるって言ってたな。よっしゃ。これで俺の人生ハッピーまっしぐらだ」
俺は有頂天になりスキップで境内を移動中に足をぐねり、階段から転げ落ちた。
転げ落ちている最中にサングラスのいかつい やーさんにぶつかり殴られた。
殴られた拍子に関西なまりの女性の胸を触ってしまい強烈なビンタを浴びせられた。
ビンタの当たりどころが悪く 俺はふらつきお好み焼きの出店に突っ込み 鉄板の上で頬が焼けた。
周囲の人が救急車を呼んでくれていたようですぐに病院へと搬送された。
しかしその救急車は大渋滞にハマってしまい、俺の苦しみは続く。
病院に到着後、緊急手術のはずが医者も渋滞でこれないということで散々待たされ、時間の経過のせいで火傷の状態が悪く大きなアザになってしまった。
俺のイケメンは台無しになり 皮膚が引きつりうまく口が動かない。
これじゃ満足にハッピーターンを食べられない。
おのれあの神め。
きっと疫病神だったに違いない。
腹いせにあの神社の賽銭箱をハッピーターンでいっぱいにしてやる。
神は願い通り
「ハッピーエンド」を授けていた。
幸せは終わりを告げ、この後の人生は不運に見舞われ続けるだろう。
実にバッドエンドだ。
日本の神にはきちんと日本語でお願いするべきであった。
だが「俺」はそんなことを知る由もない。
